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※セラフィ視点
―――会談が終わり私達は街に戻った。その間特に会話があったわけではなく、ただあの会談で話されたことを頭の中で反芻していた。
「さて、これで魔族に関しては暫く気にしなくて良くなったし寄り道してから帰る」
「承知いたしました」
………少し癪だったのはディアの言っていたジークの人物像はかなり近かったこと。私より一緒にいる時間が短かったはずなのに、そこまでジークを見ていたということ。恋する乙女の力というものだろうか。
「レインディアのところ行ってくるが帰りは遅くなるかもしれん。泊まりで~とかいわれるかもしれないから俺の分は用意しなくていい」
「承知いたしました」
でも魔族と交渉した目的の中に、魔族を抑えることで今後の大迷宮攻略の障害を排除するという狙いがあることは私にも分かる。だからこそジークは前回前々回の襲撃についても譲歩してくれたのだろう。
それ以外にも何か裏がありそうだけど―――って、
「「「ちょっと待った!!」」」
思考を中断して待ったをかける。しかも3人見事にハモる。流石にそれは聞き流せない。
「ディア露骨過ぎでしょ!?ジーク狙われてるのよ!?」
「ハッハッハ、面白いことを言うねレディ。背後には気をつけるよ」
「そういう意味じゃなくて!!!」
「ダメよジーク!私も行くから!」
気づいているのか気づいていないのか………いや、ジークのことだから気づいていない振りとかしそう。というかミラ、どさくさ紛れについていこうとしてない?
「ダメに決まってるだろ。レインディアは兎も角お前らは大迷宮攻略のメンバーだ。ちゃんと訓練しておけ」
それを言われると反論できなくなる。私達の言い出したことだし何より命に関わる。我が儘とこれではレベルが違うのだから―――
「セラ?」
このタイミングで一人うろついていたであろうクリスがエンカウント。なんというタイミング。
「君達………ここで何をしているんだい?」
私が説明しようとしたところでジークが何気なく前に出て笑顔を作る。
「ちょうど良かった。大迷宮攻略組の訓練をしようと思ってたところだから勇者君も居た方がいいと思っていたんだ」
「僕が………?ミラから大迷宮参加の話は聞いていたし僕としてもありがたい話だが、訓練を?」
「そうそう。セラフィが勇者君も居たらいいのにって言ってたから声をかけようとしていたところだ。無理強いはしないが、どうする?」
「行くさ!セラの頼みなら断る理由もないよ!」
………この男、私をダシにしてやがりました。そんなこと一言だって言った覚えはないし心にもないのだけど、でもこの状況で本当のことを話したらそれはそれで拗れそうだし大迷宮でクリスが暴走したら困るからここは乗るしかないわね。
「ありがとうクリス。嬉しいわ」
「あぁ、僕もだよ。大迷宮では頼りになるよう頑張るよ」
どうやらご機嫌らしくいつもの笑顔がこれでもかというくらい輝いている。ミラとカガリがジト目でこちらを見ているが状況が状況なので多めに見て欲しい。
「メニューはガーベラに渡してあるからこなしてくれ。一番いい点数貰えたヤツには俺からご褒美やるから頑張ってくれ」
そういうなりジークはまるで幻であったかのようにその場から消えた。たぶん、転移魔法で王城へ飛んだのであろう。
「では大迷宮攻略される4人パーティーに対する指導は私、ガーベラが行います。
死にはしませんが油断すれば非常に痛い目にあうので心してください」
どうやら今までとは違う訓練らしく、ガーべラさんの雰囲気も一転する。
私達は息を呑み、無言でガーベラさんの後に続いた―――




