5-3
※セラフィ視点
とんとん拍子とまではいかないものの建造物、侵略先などについて交渉をしている最中。
攻撃してはならない人物については既に承諾済み。私、カガリ、ミラ、ディア、イーリスさん、ミレイナ。
そして休戦協定を結ばれた場合、アドルフ王、アレイスター様に手を出さないなら一度だけ力を貸すこと。
間接的にでもアドルフ王やアレイスター様を入れたのはディアのためだろう。
「アルフィア王国については承諾しよう。魔族としてはお主とことを構えるのは本意ではない故に、貴殿の要求をできる限り呑みたいと思っておる。
しかし、だ。我々とて人間と長きに渡りこの世界の覇権を巡り争っている。そこは汲んでいただきたい」
分が悪いなりに譲歩を求める魔王ノワール。でもこれは人間への攻撃はこれまで通りやらせてもらうって言っているのと同じ。そんなこと許せるはずもないが―――
「まぁそこは好きにするといい。俺の邪魔にならない限りどうこう言うつもりもない」
「ほう?それはありがたい」
向こうとしてもそれは予想外だったのか魔王ノワールは分かりやすく驚いた顔をした。………本当に、他人に対する興味がないのだろうか。
「分からぬな。人に魔族にも慈悲を見せるかと思いきや争うと言っても止めることもなし。何を考えておる」
「そう難しく考えることはない。
俺は俺の手が届くものを守るのに必死なだけだ。だから見ず知らずの奴に配慮する余裕はないし、争いのない平和に世界に~とか皆の為に、みたいな下らねぇ理想を掲げるつもりもない」
その言葉に魔王ノワールは、いや、全員が沈黙する。
―――必死。そんな言葉がジークから出てくること自体に違和感を覚える。これだけの力を持つのに、彼は自分の周りという狭い世界にだけ目を向けているというのだから。
「なるほど、な。では重ねて問わせてもらうがそこな少女は何故力を与えた?お主の話ではそこまで広く手を回すことないと感じるのだが」
言われてみればそれは確かに違和感がある。というか最初から友好的だったし、力も貸してくれた。ミラやディアに対してもすぐに打ち解けているように思える。
「そこは気に入ったからだよ。一目見て面白いと思った。話してみて気に入った。なら手を貸してやろうじゃないか。
そんだけだ。そういった意味ではレインディアは面白い奴だぞ。最初はまるで興味なかったが俺の気を引いて友達の座につきやがった。いや、今思い返してもなかなか居ないぞあんな奴は」
「ほほう、そんな豪胆な娘がおるのか」
二人は何とも楽しそうに話をしている。………というかディアのことべた褒めね。確かにびっくりしたけどジークはあぁいうのがいいのかしら。
「あぁ、そうそう。お主に1つ提案があるのだが良いか?」
「言ってみ」
許可を得て魔王ノワールは胸に手を当て、一呼吸おく。提案、魔王からの提案というのは一体―――
「余の夫にならぬか?」
―――へ?
「え、嫌だけど」
私達の中で処理が終わる前に即答し、魔王ノワールがずっこけた。




