5-2
※セラフィ視点
―――目的地に転移すると目の前には豪邸。え、なに、これ。
「お客さんがもうすぐ来るから出迎えて、所定の部屋に案内してくれ。
ガーベラは俺らにお茶」
「「承知いたしました」」
ジークが指示を出すと二人は即座に行動を開始。何処からともなく現れたメイドを連れてアスターさんが向こうへ行く。
「さ、のんびりしようか」
――――――――――――――――――――――――――――――
―――それから30分ほどしてアスターさんがお客様を連れて私達のいる部屋へやってきた。
「………ほう、お主が異世界の魔王か」
まず最初に顔を出したのは黒檀とした長く美しい髪の美女。頬には黒い十字の痣のようなものがあり、纏う雰囲気は重苦しさを感じる。
………これが、魔王。
「魔王ちゃんか、なるほど」
なるほどじゃないんだけど。なんて心の中で突っ込みを入れていると何度か見た褐色の少女(リーベという名前だったと思う)と額に角を生やした大男、扇情的な衣装を身に纏う青い肌の女性、眼鏡をかけシワ1つないスーツを着こなす紳士のような男が入室。
………恐らくこれは八星魔将だろう。
「じゃあまずは自己紹介からしようか。俺はジーク。異世界の魔王だ。
後ろのやつはメイドはガーベラ、執事はアスター。俺の配下だ」
魔王がガーベラさんとアスターさんを一目見て視線を戻す。席に座り、ジークと向き合うまで誰も一言も口にすることはなかった。
「余はノワール。この世界で魔王と呼ばれる者。リーベについては見知った仲であろうということで省く。
後ろにいるのはフォルカロル、バルザック、パイモン。八星魔将という余の側近である」
紹介が終わると三人が軽く一礼をする。なんと重苦しいことだろう。
「それで、そこな少女達は?」
「連れなんだが駄々こねたから連れてきた。一応顔は覚えて共有しておいてくれ。
俺に喧嘩を売る時にちょっかい出せば一発だから」
軽口で言うもののそこには確かな殺意があり、手を出せば殺すと暗に告げている。魔王ノワールは私達の顔を一通り確認すると頷く。
「承知した。ではリーベよ、彼女らには間違っても手を出すなと全魔族に通達するように」
「戻り次第直ぐに共有致します」
特に異論はなくスムーズに話が進む。魔王ノワールが何を考えているか分からないけど、少なくとも今は敵対したくないということだけは理解できる。
―――ただ、配下の全員がそうかと言われるとそうでもないらしい。
「貴様………あまりデカイ態度でいると痛い目をみるぞ!」
角を生やした大男―――八星魔将バルザックが憤慨し、テーブルを叩く。その手はいつでも抜刀できるよう柄を握っている。一触即発の中、ジークはため息をつく。
「主の意思を汲め。全く―――躾がなってないなぁ」
いつの間にか八星魔将バルザックに肉薄し、赤黒い魔力を纏った腕でその首を掴む。―――全く反応することすらできずに。
「がっ!?」
「魔力を隠してはいるがお前はリーベちゃん達の話を聞いてないのか?何故魔王自ら赴くことを決断したかも分からねぇか?分からねぇよなぁ。ならあとは―――」
「ジーク殿、非礼を詫びよう。矛を納めては貰えぬか?」
私達も、バルザック以外の八星魔将も驚愕する。魔王ノワールが席を立ち、頭を下げて謝罪したのだ。
それを見てジークはバルザックを投げ捨て、席に戻る。
「これで他の奴等も理解したか?じゃあ早速話をしようか」
謝罪は=譲歩ともなる。交渉はこれでジークにとって有利な形でスタートすることとなった。




