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※ミラベル視点
お茶会が終わり、イーリス様がジークと約束していた大迷宮についての情報の開示のため私達は別室に集まっていた。
「先に言っておきますが、こちらで把握している情報はあまり多くない上に考察など不確かなものも含まれています」
「大丈夫だ。憶測でも何でも情報がないよりはいい」
「分かりました。では、まずはこちらを」
テーブルに広げられた大きな地図。この国や辺諸国が記載されている、冒険者組合が発行した世界地図。その7箇所に×が書き加えられている。
「この×が書かれている箇所に大迷宮の入り口があります。アルフィア王国ではそのうちの黒の大迷宮ラースの管理をしています。
危険な上に難易度も高く、生半可な冒険者が挑戦しないよう試験を行い合格した者のみが入ることができるようにしています。………それでも、帰ってこない冒険者は少なくありません」
私もそれは知っているし、実はミレイナ様監督の元、勇者チームで大迷宮に挑戦したことがある。………もしかして、これって付いていく口実にできるのでは?
「ほうほう。それで、帰ってきた冒険者の情報を買って内情を少しずつでも把握しているわけか」
「その通りです。大迷宮に関する資料はほとんど残っておらず、いつできたのか、何故できたのかも分かっていません。こちらで把握しているのは中は様々な仕掛けと魔物で満ちていること。少なくとも30階層かそれ以上あり、10階層ごとに強力な魔物が配置されていること。その魔物は一定周期で復活していることなどです」
これも私達が実際にやった内容。10階層、20階層の所謂ボスを討伐したものの1週間程度で復活していた。30階層以上ある、というのは私達のパーティーがそこまではたどり着いておりボスを目前にして引き返したからである。
「資料をみるに気になる点はあるな。ふーん、なるほど」
「どこが気になるの?」
さりげなくジークの隣を確保してみている資料を覗きこむ。………読んでいるのは大迷宮に関する考察の部分。ジークは私に分かるよう指さしてその部分を示してくれる。
「魔物が生息しているらしいがそれは魔物の生態は不明、魔物はその迷宮でしか存在しない種類のみ、しかも異臭などの話もなし。しかも魔物は下層に下りるたびに強くなるし、10階層毎に強力な魔物が配置されている。10階層毎に入り口にワープできる魔法陣なんてあって、挑戦者にとっては至れり尽くせりだ。
………随分と凝った作りをしていると思わないか?」
「迷宮自体に自浄作用があり、その迷宮の魔物は迷宮が生み出している可能性があると考えられます。ワープについては先駆者が配置した可能性も含めて考えていますが………」
「それだけか?」
ジークにそれを言われて全員が別の意図について考えてみる。ジークに言われるとそれだけか?或いは?と思ってしまう。
「………もしかして、もしかしてだけど。迷宮の製作者には何か意図があるのかも。迷宮に挑んでもらいたくて、そして実力のある者が最下層に来て欲しい、みたいな」
真っ先に手を挙げたのはカガリちゃん。その読みは私も共感する部分がある。
「そうだな。それは俺も考えた。いい読みだ、カガリ」
そういわれて照れたようにそっぽをむいて頬を掻く。それくらい普通よ、なんて可愛いこと言うじゃないの。
「更に踏み込んだ考察をすると………まぁこれはまた今度でいいか。次の説明を頼む」
「「「すっごい気になるきり方しないで!?!?」」」
なんというか、マイペースというか、意地悪といえばいいのかな、これ。




