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※セラフィ視点
「―――ということがありました」
「ほほう………白馬の王子様ならぬ黒衣の魔王様ですか。素敵ですね」
ディアはイーリスさんの話を聞いてジークとイーリスさんを交互に見る。
イーリスさんは羞恥でプルプルしてるけどディアはまるで気にしていない。鬼か。
「なるほどのう」
「ん?どうした?」
アドルフ王はアレイスター様と同じくジークに興味があるらしく色々と話をしている。
「いや、お主の雰囲気がの。とても見た目相応ではないと思ったがずいぶん長生きしとるのだなぁ、と」
それを聞いて女性陣が一斉に反応する。確かに見た目は二十歳か其処らの青年にしか見えないがこれほどの力を持つ魔王であるなら確かに長生きでも不思議ではない………ないのだけど、話しているとそういったことは感じられない。
「流石王様だな、鋭い。
この力を手にしてから老いなくなったからな。実年齢は四桁いってるよ」
「なるほど道理で。多くの出会いと別れを、経験をされてきたのですね」
アドルフ王もアレイスター様も納得したように頷く。千年以上生きてきた魔王。なるほど、確かにそれだけの年月が経てばここまでの力も付くだろう。
「まぁそんだけ生きてりゃな。それよりイーリスの作った菓子旨いな。そのアップルパイ貰えるか?」
「え、あ、はい」
ジークがイーリスさんにお皿を渡すと慌ててアップルパイを切り、皿に盛って返す。そのタイミングでガーベラさんが新しい紅茶をそっと手元に置く。
………今、ジークは明らかに話題を逸らした。触れてくれるなということなのだろうか。
「そういやミレイナとイーリスは友人なんだっけか」
「え、えぇ。イーリスは元々この国にある魔法学校の先輩よ。私が魔法の研究を独学で行ってるのを知って色々手伝ってくれたの」
へー。良き友人であることは知ってたけどそうだったの。そして、魔法への探求はその頃から始まってるのね。
「あの頃のミレイナは寝ても起きても研究だったし、地味な格好してたから色恋とは本当に無縁だったわよねぇ。今くらいちゃんとしてれば引く手あまただと思うわ」
「ちょっ!?イーリス!貴女だって結局今の今まで処女じゃない!人の言えないでしょ!」
方々でお茶を吹き出しそうになるか、むせている。男もいるのにそれは不味いですよ。
「そっ!それは仕方ないのよ!何故か知らないけど高嶺の花とかなんとかで誰も言い寄って来なかったし貴女の研究に付き合ってたし!というか貴女も処女でしょ!」
「おーいそこの処女達。そういうのは余所でやれ」
「あ、ジーク。私も処女よ?」
「それ今言う必要あるか………?」
どさくさに紛れてミラがジークに処女アピール。処女はステータスでも希少価値でもないと思うのだけれど。
「ホッホッ、若いのぉ」
「父上………」
―――お茶会はとても楽しいことになっていた。




