4-11
※リーベ視点
時系列的には撤退した翌日くらいの話になります。
帰城するなり動ける幹部と道中の治療で回復したナイアスを連れて王座へ向かう。
先に用件だけを魔王様へ伝えるよう伝令を出したので既に他の八星魔将や幹部が王座に揃っていた。
「リーベ、ナイアス、ただいま戻りました」
魔王様へ向けて片膝をつき胸に手を当てて深く頭を下げる。
それに対して魔王様ではなく傍に控えていた八星魔将の一人が声をあげる。
「敗軍の将がどの面下げて戻ってきたか。いいか、本来であれば―――」
「よい、フォルカロル伯爵。此度の敗戦はイレギュラーによるもの。咎めるつもりはない。咎めさせるつもりも、な」
魔王様にそう宣言されてはフォルカロルもこれ以上責めることはできず、下がる。
麗しき魔王、ノワール様。魔族としてみても、女としてみても、魔王様の美しさの前に霞んでしまう。本当に美しい。
黒檀とした長い黒髪を靡かせ立ち上がり、こちらに視線を向けられる。
「話は聞いている。グラード公爵は戦死、ナイアスも負傷、精鋭で固めた軍勢は半数を失った。
しかも、それはたった一人の男によって成された。報告によるとその男は魔王を語ったそうだな?」
「その通りにございます。グラード公爵も魔装を持ってしてなお、まるで届きませんでした。
しかも、傍に控えていたメイドでさえ魔装したナイアスが一撃すら加えることができないほど強大でありました」
完敗であると、私は惜しげもなく告げる。グラード公爵とナイアスは八星魔将きっての実力者だったのだからそれが完敗したと言われて他の八星魔将や幹部がざわつく。
「恐らくは、余を越える力を持つのであろうな」
「………恐れながら、魔族全戦力を持ってしても敗色濃厚であると進言いたします」
無理だ。あれは文字通り世界が違う。あの魔王の前には全てが霞む。魔王様でさえ、勝負になるか怪しい。
「ふむ。であれば停戦協定は受けるべきであろうな」
「魔王様!?其奴は魔王を語る不届き者ですぞ!たかが一人と魔族全体で停戦などと―――」
「であればバルザック、お前が奴を討て。出来るなら、な」
八星魔将バルザックはすぐに口を閉ざした。この場においてやつの力を侮る者はいないようで、助かった。
「出来ぬなら口にするな。それに、停戦協定は悪い選択肢ではないぞ。
魔神復活を成した後に奴を討てば良い。それまで無理に敵対せず、刺激しなければ良い。提示された条件としても難しいことではあるまい?」
その通りである。これでこの場は収まった。戦力が整ってから、魔王様を越える存在である魔神の力があれば奴に勝てる。ならば今は耐え時である。
「であるならば交渉についてですが………その魔王に興味があります。私も供をさせて頂けないでしょうか」
「パイモンが興味を示すか。いいだろう、許す。
では、人選について話し合おうか」
二人の魔王が合間見えることは確実となった。
………願わくば、これが魔族により良い未来をもたらすことを祈る。




