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※ジーク視点
異世界からきたから文無しお兄さん。お兄さんを推せ(なお反応
ミレイナという女性に連れられ重役を泊めるために造られたであろう白い石造りの家に案内された。
セラフィとミレイナは終始無言。ミレイナの護衛も同様。なんとも胃にくる状態であった。
「………そちらに座ってください。誰か、彼女達にお茶を」
「はい」
護衛のうち数人が居間を出る。こうして俺達3人とミレイナが向かいあう形で座り、一呼吸おくとセラフィが口を開いた。
「私は冒険者になりました。そのために必要な力を、こうして得ています」
俺を見ながら宣言する。言外に『私の決意は揺るがない』といっているのだ。
「貴女はまだ若すぎるわ。この方がどれほどの実力者なのかは分かりませんが迷宮攻略は危険すぎるの」
「それでも!私は諦めるわけにはいかないの!」
………このやり取りはさっきから何度も繰り返している。ミレイナはセラフィを想って危険なことをさせたくない。セラフィは自分の目的のために何があろうと成し遂げたい。だから平行線となる。
事情を知っているかは分からないがセラフィの危うい決意にカガリも不安げにしている。
「ちょっといいかな」
なるべく平坦に、それでいて殺気を放って二人を威圧すると二人は息を呑んだ。
「このままじゃ話が進まないし俺とカガリは蚊帳の外だ。とりあえず自己紹介から始めようか。
あ、俺はジーク。この二人に呼び出された異世界の魔王だ。気軽にジークとかお兄さんとか呼んでくれていいよ」
空気を読んで空気を読まない。
セラフィが口を開けて呆け、カガリはフリーズ。ミレイナは困ったような表情をしている。
「い………異世界の、それも魔王?ジークさんは面白いことを言うのですね」
そうは言いつつも先ほどの殺気に当てられ冷や汗を掻いており一概に否定もしがたいというところだろうか。
「貴様………無礼な上に戯言をぬかすか!」
護衛の一人が剣を抜きこちらに向ける―――
「で、なにかな?」
しかしその剣に刀身は無く、なんとも滑稽な状態である。
「今のって………」
どうやらカガリは見えていたらしい。
「じゃあこうしようか。事情は後で聞くとして俺の戦闘能力をみて、お眼鏡に叶うかどうか判断してくれ。
近隣に迫っている魔物の群れの討伐とか………さ?」
「………何故、それを」
それは肯定。隣にいるセラフィ達は俺とミレイナを交互に見ている。やはりこの事はこの街に人には知らされてないのだろう。
「勘もあるけど君がいること、護衛が緊張しているところ、あとは街にくる途中見かけた一部の冒険者と兵士からかな。あまりにも街の活気と差がある。
人手、足りないんじゃない?」
最期は笑顔で〆ると背後にいた護衛の女性が頬を朱に染める。ミレイナは状況が状況だけに先ほどより緊張した表情をしている。どうやら100点らしい。
「………分かりました。貴方達にも依頼しましょう」
魔王の初陣は決まった。
この戦いは世界を揺るがす一手となる。ミレイナにはそんな予感があった―――