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※セラフィ視点
―――黒騎士団に連れられ王子を含め、私達は謁見の間へ移動する。
アレイスター様が反論したもののバルハード王子より王命であると告げられては勝てない。
………道中、隙をみてカガリとミラ、ガーベラさんと合流したが可哀想だった。突然現場に転移させられ訳の分からぬまま黒騎士達にじゃあお前達もこいと言われて序でに連行。
ガーベラさんは事情を知っていたからいいもののカガリとミラは????ってなってた。
「アドルフ王、お連れしました」
「うむ」
玉座にはアルフィア王国の現国王、アドルフ・リイズ・アルフィア様のお姿。
バルハード様に向かって下がるよう告げると私達のほうへ目を向ける。私達は当然跪いて王への敬意を払う。………ジーク、ガーベラさん、アスターさんは除く。
「急な呼び出しですまない。早急に確認する必要があるということでな。
………そちらの青年が此度の功労者であるジーク殿で間違いないかね?」
「おう。俺はジーク、魔王だ。後ろの二人はアスターとガーベラ。俺の執事とメイドだ」
………もう予想はできていたけど礼は一切ないどころかこの砕けた口調。当然王の後ろに控えていた騎士達がざわつくが王がそれを止める。
「なるほど。………随分と、多くの経験がにじむ青年だな」
ジークをみてまるでその足取りを噛み締めるようにそう呟く。王の目には彼がどう映るのか。何を気づいたのか。………そういえば、私だって彼のことをなにも知らないのよね。
「アドルフ王!彼の無礼は極刑に値しますぞ!」
王の制止を振り切り黒騎士団団長タイラーが今にも剣を抜きそうなほどの剣幕で王に詰め寄る。
「ではお主が裁けばよい。………ワシは、一切無関係とさせてもらうがな」
そう言われてタイラーは苦しそうな表情をし、彼の背後の貴族がざわつく。
………なるほど、タイラーはジークが別次元の力を持つことを正しく理解しており、第一王子派の貴族はペテンだとでも言って騙してるのだろう。
「ジーク殿は魔王であり、我が国の民を救ってくれた恩人。対等であるならば無礼ではあるまい」
「しかし!あの男の配下まで―――」
「我らが膝を折るのはただ一人、魔王ジーク様のみ。それ以外はありえません」
男の言葉を遮りいつの間にかタイラーの背後に移動していたガーベラさん。その殺気はあのタイラーが硬直し、なんとか振り返った頃にはジークの傍に戻っている。
「ワシの臣下の無礼、どうか許してほしい」
そういうなり玉座を立ち、王が頭を下げる。………なんと聡明なことか。これでジークが彼らに手をかける理由が無くなるだろう。
「いい王様じゃないか。いいぞ、無かったことにする」
「アドルフ王!一国の頂点に立たれるお方が無闇に頭を下げられては―――」
「愚か者がぁ!」
王の一喝にタイラーの背後の貴族が息を飲む。そのプレッシャーは歳をとり晩年に差し掛かってなお凄まじい。
「ワシはお主らを守るために頭を下げた。ジーク殿は我が国の者ではなく、ましてはこと力において10万の大軍を無傷で退ける猛者。
ジーク殿の怒りを買いお主らを裁くと言った時、誰一人として止められるものか!」
………王は正しく理解している。ジークという存在を。その力を。お爺様は、こんなに凄い方に仕えてたのですね。
「アドルフ王!その男はペテン師です!魔族と組んで我々を欺いているのです!騙されてはなりません!」
ここで業を煮やしたバルハード様が前に出て、剣を握る。その視線の先にはジークの姿。
「ジークといったな?よくもまぁそんなハッタリをかませたものだ。ここでその化けの皮を剥いでやる!
まぁ、素直に嘘を認めて誠意を示せば命は助けてやるかもしれんがな」
その視線を………ガーベラさんに向ける。
あ、私の中で赤信号が、赤信号が出てる。これ不味いやつ。というか馬鹿なのか。それともタイラーにいいように言われてあの出来事が作り物だとでも吹き込まれているのか。
「ほう………?」
背後の貴族達が同調する中で、ジーク達の目が赤い光を帯びた。




