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※セラフィ視点
「んー、いいよ」
先ほどの話を伝えたところ少し考えて、まさかの了承を得た。思ったよりあっさりしていて拍子抜けしている。
「じゃあカガリとガーベラにはお留守番してもらう。訓練メニューはあるから早めに戦力になって欲しい。俺を除くと前衛少なくてバランスが悪い」
それを言われてカガリが肩を落とすが、それは確かに言えている。私は生粋の魔法使いで前衛は論外。ミラはサポーターに近いので、障壁を貼ることはできるがそれだけで前衛向きではない。
となるとカガリに前に出てもらわないと困ることが多い。
「寂しいならミラベルもつけるか?」
「えっ」
「是非とも!」
本人の意思は無視され、いつの間にかガーベラさんがミラの背後に。これでもう逃れられない。
「じゃあ、いくか」
「お、おう」
他の面子がポカーンとしている中、ジークだけが気だるそうに歩き始めた――――――
―――――――――――――――
―――私達は魔方陣に乗っていつものように王国の人気のない場所に移動………してなかった。
まさかの城の中。いつの間に繋いだのか。
辺りを見渡すとイーリスさんとマイアさんが待機しているのみ。せめて何処かの一室に飛ばされるとかではないのか。ここは見覚えがあるのだけれど。
「こちらへどうぞ」
案内された先は………まさか過ぎた。
ここも知っている。第二王子であるアレイスター様のお部屋です。何故。
「えっと?」
私が戸惑いつつもイーリスさんに目を向けると―――
「アレイスター様とレインディア様がお待ちです。勿論嘘はついていません。私も用がありますから」
にっこりイーリスさん。これは最早詐欺ではないだろうか。
「王子ねぇ。ま、いいや。行こうか」
そのまま扉を開けて入室すると………懐かしさのある顔ぶれ。
「セラフィさんには久し振りと、そして魔王には始めまして、かな。
私はアレイスター・リイズ・アルフィア。君の武勇は耳にしているよ」
続いて隣に控えていたレインディア様が前に出る。
「レインディア・リイズ・アルフィアと申します。魔王ジーク様。素敵な殿方であるとイーリスとミレイナから聞いておりますわ」
「「ちょっと待ってください!?」」
「久し振りね、セラフィ」
二人をスルーして今度は私のほうを向くレインディア様。………変わらないなぁ。
「………再びお目にかかる栄誉を賜り恐悦至極に存じます」
旧友に会うかのように好意的に接してくださるレインディアに、私は敢えて跪く。それをみて一瞬悲しそうな顔をするが見ない振りをする。それで理解してくれたのかジークのほうへ視線を向けてくれる。
「………やれやれ。
二人に話があるのですが、その前に確認を。セラフィさんのことについて、ジーク殿はどれだけご存知ですか?」
「ほっとんど分からない」
まぁ話していないので当然の回答。しかしすがすがしいまでに即答である。
「………知りたいと思ったことは?」
………これは本人の前で話すことだろうか。でも、少しだけ、ほんの少しだけ気になるので耳を傾けてみる。
「そりゃ思うさ。だがそれはセラフィが決めることだ。他人から聞くつもりも無理に聞きだすつもりもない。その意思がある時に話してくれるさ。何れはな」
「それで彼女の願いが叶うと?」
私のそれに、アレイスター様はやはり心当たりがあるらしい。そしてその質問は、この願いの果てに私の望むものがあるかということを問うている。
「分からないよ、俺にも。だが、この道の果てを見てセラフィが納得するかどうかだ。結論が出るまで傍にいてやる。支えてやる。ま、ヤバイと思ったら止めるさ。だからコイツは安心して走ればいい」
………この男は本当に、なんてこというのだろうか。
体温が上がっていくことを感じつつ、胸のうちで何かがくすぶっている気がした―――




