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※セラフィ視点
私はセラフィである。只今不機嫌。
いつものように朝食を摂っている。
………なのだが、いつもと違う部分が二つ。
一つは朝食。基本的にガーベラさんが用意してくれるのだが今回は違う。簡素なサンドイッチと目玉焼きとベーコン、あとはコーヒー。
そしてもう一つは―――
「ほう、旨いな。マヨネーズから拘りを感じる」
「そう?お世辞でも嬉しいわ」
「本音だよ。朝から良いものを貰った。ありがとうな、ミラベル」
そう、ミラである。朝早くに訪ねてきたらしい。朝食を持って。
「………クリスのお世話はいいの?」
「大丈夫よ。彼も子供じゃないんだから一人で用意して食べられるわ。それに、昨日はクリスまで鍛えてくれたんだしお礼しないと」
話のレベルはだいぶ低いのは気のせい。というか、オカンである。ママである。ミラベルママがここにいます。
「………ホントにそれだけ?」
「やだわセラったら。疚しいことなんて考えてないのですわ」
ジト目を向けつつ聞いてみるとミラは特に慌てる素振りも見せないが口調が既に可笑しい。お嬢様か。………そういえばお嬢様だ。
「似合っておりませんことよ」
「そんなことないですー。私こう見えて貴族の令嬢なんだから」
「ママの間違いでは?」
「ママ!?」
朝から他愛のない?会話をしつつほのぼの?した時間を過ごす。………日に日にミラの行動が露骨になっているというか、近くなってる気がする。やっぱり昨日ナニカアッタノカナー。
「じゃあ一息ついたあと訓練場に集合な。俺は先に用意してるから一時間したら来てくれ」
ジークはそういうなりさっさと席を立ち、部屋を出ていった。
「それにしても、魔王の拠点に勇者を招いたなんて前代未聞じゃない?」
カガリが楽しそうに話し出す。それは言えている。魔王の指導を受けた勇者は何と戦うのか。鍛えてくれたことには感謝するが死ねー、みたいな。
「確かに。しかも昨日はクリスが大浴場でジークと話をしたと言っていたわ。魔王と勇者が湯船に浸かって語り合うなんて可笑しな光景ね」
何を語り合ったのか、それが一番気になるかもしれない。勇者とは何たるか、魔王とは何たるか………いや、それ以外の気がする。
「………そういえば武闘家の人が虚空に向かって呟いてた。
魔王は夜も魔王なのか、と。魔王は男としての格も違うのかと」
カガリが顔を赤らめてそんなこと言うので一斉にお茶を吹き出した。
「な、ナニを見たのかしらねー」
「そ、そうよね!へ、変なことをいうわー!」
大きすぎる爆弾による被害は甚大。ふと気がつくとミラがもじもじしている。ムッツリさんめ。
「お楽しみのところ失礼します。ミレイナ様がいらっしゃいました。どうされますか?」
片付けをしていたガーベラさんから問いかけられる。どうされるかと言われても会うしかないけど、私に?何だろうか。
「通してください」
「かしこまりました」
部屋を出て数分後、ガーベラさんがミレイナを連れて戻ってくる。
「ごめんなさいね、セラフィ。実はお話があって………。イーリス様のお使いなの」
「………ジークも必要よね?」
そういうとミレイナの表情が曇る。………当たりのようだ。
「分かった。ちょっと待ってて」
主目的から遠退いている気がして気が進まないが、ミレイナ達に関わることなので無視ができない。
それが甘いのか、それともこれでいいのか。答えが出ないことに歯噛みしながら私は訓練場に足を向けた。




