3-2
※セラフィ視点
―――アルフィア王国近郊
あれから時間が経ち、敵軍はアルフィア王国のすぐ近くまで迫っていた。
「しかしまぁ本腰入れてきたなぁ」
ジークは相変わらずの余裕。ガーベラさんの報告を受け、敵は幹部候補や上級クラスの魔物を連れているなど、その戦力の質まで高いことが分かってもなおそれは変わっていない。
「で、ジーク。策はあるの?もしくは力づくでどうにかするの?」
どちらもやりそうだ、なんて思いつつもとりあえず聞いてみるがジークは微笑みだけ返してきた。待て、何をする気だ。
「しかしこちらの戦力はこれだけ、なのね」
隣でカガリが呟く。そう、こちらが用意できた戦力はおよそ3000。うち1000は白魔術士団の団員で、残りは王国兵士と私達、クリス率いる勇者チーム。黒騎士団は国内の護衛として待機している状態だ。
「それについては………言い訳のしようもありません」
申し訳なさそうに頭を下げるイーリスさん。本来であれば騎士が壁となり敵を抑え、その間に魔法で攻撃を加えるのが定石のはず。それが魔法使いが最前線で戦い後方で騎士が待機しているという常識では考えられない状態。死ねと言っているのと同じである。
「ま、いいさ。そもそも、今回の主役は俺で、ヒロインはイーリス。それ以外は極論ではあるが、いてもいなくても変わらない脇役だ」
それを聞いてむっとする私達。イーリスはきょとんとしていて、ミレイナは………納得いかないという顔だ。本人も言っているが極論であり、そうでないと分かっていても、である。
「今回迎撃は俺とガーベラで行う。予定通り、イーリスが指揮を取って防衛。セラフィ、カガリはミレイナに付いていればいいから」
「………気を付けてね」
「おう。お前らも無理するなよ」
笑顔で返すとジークはガーベラを抱え、敵陣へ向けて飛んでいった。ジャンプしただけなのに、凄い勢いで飛んでいった。
―――残された私達はそれぞれの持ち場につく。勇者チームはリーダーの強い要望により私達と一緒に行動することとなっている。
「ねぇ、セラ。ジークは大丈夫かな?」
不安そうな表情のミラ。心に大丈夫、大丈夫だと言い聞かせてもそれが拭えない自分がいるなんて言えなくて、そんな自分に戸惑ってもいる。だから答えが出せなくて―――
「大丈夫よ、ミラさん。ジークはすっごく強いから。………それにね、約束したから。ちゃんと貰った武器の使い方、教えてもらわないと」
そう言い切ったカガリは声も表情も明るい。確かにそうだ。今回のこともあり簡単な説明は受けているものの本格的な指導はまだしてもらっていない。流石カガリ、偉い。
「ふふ、そうね。じゃあ、大丈夫ね」
視線の先にいるジークはガーベラさんを降ろすと丸腰で敵軍と相対する。
「さて、と。じゃあ、やろうか」
―――魔王の背中に、不思議と私達は安心していた。




