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最強魔王の躾け方!  作者: ー零ー
第2章 -人魔大戦-
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2-20

※セラフィ視点

「で、何について話があるのかな?」


喫茶店をまさかの貸し切りにしてイーリスさんとジークのあまりにも空気が重い雑談が始まった。


丸テーブルに二人は向き合うように座り、ジークの後ろには私とカガリが、イーリスさんの後ろにはミレイナとマイアさんが、その隣にクリスとミラが立っている。


「ふふふ、おおよそ察しはついているのでは?」


「買いかぶりだ。君らの思っているほど賢くはないよ」


どの口が言うか、という視線が四方から突き刺さるがころころと楽しそうに笑うだけ。マイペース極まれり。


「ではそういうことにしておきましょう。


私からは二つ。一つは戦力の提供。貴方自身が力を貸して頂けるならそれが何よりですが、それが難しいということでせめて何かしらの戦力になるものを頂けないかという相談です」


「まぁ断るけどな」


「………だと思いました。お金も、権力も、それを振りかざすことも貴方にとっては取るに足らないでしょう」


最初から交渉の余地はないと理解して、それでもということかと考えたが、それにしてはあまりにも拙い。ということは―――


「それでもすがるほど、この国は窮地に立たされているということです。国王も高齢となりお身体も悪く、その跡目争いと貴族の腐敗により疲弊している状態で………始まろうとしているのです」


その表情は真剣で、かつ旗色が良くない。誰もが危機を感じざるを得なかった。


「遥か昔にあった、今ではお伽噺として語り継がれるだけのもの。人魔大戦………それが再び起ころうとしています」


私は知っていたがそのお伽噺は史実を元にしている。遥か昔に魔王が多くの魔族を率いて人間の領土に侵攻し、500年以上戦い続け人類の7割が犠牲となった大戦のことだ。


「魔神と呼ばれる魔族の神。初代勇者が仲間と共に打ち倒し、封印した魔神。しかし封印に綻びが生じている。もし復活すれば今度こそ人類は滅亡するかもしれません」


それは実質、王国最強の魔法使いが敗北を宣言したようなもの。クリスやミラは知っているらしく苦虫を潰したように苦し気だが―――一人だけ空気は違った。


「今の戦力じゃ足りないか………いや、足並みが揃わないだろうしそれ以前か」


「………そういうことです。我々は目下封印の補強などできる限りのことをしていますが現状では延命措置に過ぎません」


「で、セラフィを利用して俺を味方につけたいわけだ」


このタイミングで自分の名が呼ばれ思わずドキッとした。いや、それより私を利用してというのはどういうことだろう。


「先に言っておくがセラフィ達が魔族と戦うなら止めはしないが手伝うつもりはない。ほとぼりが冷めるまで工房に引きこもる」


「その際はあらゆる手を尽くしてご奉仕させて頂きます」


我関せずを貫くジークと少し頬を赤らめてそう宣言するガーベラさん。ナニをするつもりだろうか。メイドにご奉仕とかご想像にお任せされるわ。


「やはり、ダメですか。………一応理由を聞いても?」


最早とりつく島もないと肩を竦めるイーリスさん。なんというか、急に他人事のような冷たさに困惑してしまう。


「………そうだな、違和感を感じたからかな」


「違和感………?」


「ちょっとな。それで、妥協策が二つ目だろ?なんだ?」


違和感を感じた………その言葉に引っ掛かるものの次を促されたイーリスさんはそれを追及できず次の話を始める。


「大迷宮に関する情報が欲しいのです。正式なクエストとして依頼しますし、報酬はそれなりに、そしてミレイナと勇者達を付けます」


「え、いらな。お荷物じゃん」


「それはあんまりな言い方じゃないか!?」

「そこまで言わなくても!!」

「………アハハ」


上からクリス、ミラ、ミレイナ。確かにジークと比べたらそうかもしれないけど。


「メンバー選抜する上で間違いなくクリスは要らない。お前、俺の指示聞けないだろ。


ミラベルはクリスのお守りがあるからあんまり嬉しくない。ミレイナは現状連れていっても良いがそっちの人手も足りてないんだから悪手じゃないか?」


そう言われて3人が抗議を止める。良いの、クリス。貴方はお守りがないと危うい子供扱いされてるのよ。


「なるほど、聡明な方ですね。では詳しい摺合せはこのあとするとして、この依頼を受けてくださるという認識でよいですか?」


「この2人が許可するなら―――」


その時、店の扉が勢いよく開き、血相を変えた兵士が息を切らしながら飛び込んできた。


「イーリス様!ま………魔族が!魔族の大軍が近隣に迫っております!しかも………八星魔将軍3名を確認!」


「………早いわね。分かりました。すぐに出ます。


ミレイナ、準備を」


「はい!」


突如魔族の大軍が襲来。先ほどの話が頭を過る。


―――人と魔の決戦は、近いのかもしれない。

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