2-19
※セラフィ視点
―――翌日、私達は優雅な朝食を摂ってからあの喫茶店に向かった。
「ジークって多趣味よね。他にはどんなものを作ってるの?」
「物造りってのはそこに付随して多方面の知識を求められるからな。その結果豆知識がやたら増えたってだけだ。
調理器具とか食品の保存について、後は食糧に困らないよう栽培とか養殖とかな。あの工房だけで自給自足できるようになってるぞ」
「へぇ~。あの空いた区画とかがそれ?」
「そうそう。管理はアクター………あの執事が担当しててメイドゴーレムが手足となって動いてる」
「あれ聞いてびっくりしたわ。あのアクターさんとガーベラさん以外ゴーレムなのよね。人間みたいだったわ」
「あれ作るために苦労したよ。俺の部下に協力してもらってようやく形になったようなもんだ」
とても楽しそうにミラとジークが話をしている。カガリはそれをジーっと見ていて、ガーベラさんは相変わらず。
………なんというか、近くない?心なしかミラの表情も明るい。というか、ジークに対する興味というか信頼のようなものを節々に感じられる。一晩で何があったのか。もとい、何をした。
「ジークの部下って………ガーベラさん?」
「私は部下というよりメイドです。ジーク様が定めた幹部がいらっしゃいます。所謂魔王幹部………四天王ですね」
淡々と補足をしてくれるガーベラさんは変わらずジークの傍をキープ。愛を感じる。
「………一晩で随分仲良しになったのね。お部屋で何をしてたのかしら」
カガリがジト目で二人を………特にジークを見ている。お部屋で?なんのことかしら。
「大したことじゃないさ。気になったことがあるって尋ねてきたから色々と話をしただけで、疚しいことは何もない。な、ガーベラ」
「私も同席しておりましたが話をされていただけです。ミラベル様は友人を大切にしてらっしゃるのですね」
―――いつもクールなガーベラさんが慈愛に満ちた微笑みをみせる。ミラに視線を移すと気恥ずかしそうに目を逸らしている。………余計なことまで言ったかもしれないが、怒ることはできない。何より、友人として心配してくれている彼女を叱責するなど私のプライドが許さない。
「―――セラ、ミラ!」
しかし、ここでクリスが乱入する。喫茶店が目と鼻の先というところまで来ていたところ、店の前で待っていたクリスがこちらに気づいたのだ。
「貴方が何を言いたいか分かるから先に言っておくわ。ジークに失礼な真似をするようなら私はパーティーから抜ける。これは、本気よ」
「ミラ………!」
怒気を孕んだ瞳に圧され、それだけ言っておとなしくなるクリス。目を見れば分かるがミラは本気だ。それを理解しているからこそクリスはこれ以上口を開くことは出来なかった。
「あら、随分仲良くなったのですね」
そんな光景を遠くで見ていたミレイナが微笑みながらそんなことを口にした。誰を差してのことかは分からないが、詮索するのは止めておこう。
「よっす。じゃあお話しようか―――そっちで隠れてるのも一緒に」
ミレイナの後ろを見てそう告げると背後が歪み、白いローブを着た黄金とも揶揄できる美しい金髪の女性が姿を見せる。私も知っている人物。いや、この世界でも広く知られている彼女の名は―――
「始めまして、魔王ジーク。私はイーリス、白魔術士団の団長です。ミレイナの報告にあった異世界の魔王、貴方に興味があってきたの」
魔法において王国最強と言われるイーリス団長という思わぬ人物の登場。さしもジークは―――
「おう、じゃあお茶しながら雑談しようぜ」
いつもどおりだった。




