2-18
※ミラベル視点
モブにも名前はあったのだよ
―――その晩、頃合いをみてジークの部屋のドアを叩く。本当なら聞き耳を立てたいところだが意味はないだろうし、直球のほうが歓迎されるだろう。
なんて考えているとドアが開き、メイド服を着たガーベラさんが現れる。
「お茶をご用意しております。どうぞ」
………予測済みということだ。そんなに分かりやすかったのかと自問するが答えは出ないので頭を振って切り替える。
「やぁミラベル。お茶請けはいるかい?」
「大丈夫よ。美味しいみたらし団子も頂いたもの」
実はお風呂からあがったあと用意されたお茶とみたらし団子を三人で食べている。ちょっとしたガールズトークのお供にしては見事な味であった。
「分かった。
それで、答えられる範囲で答えよう。因みに団子はあんこよりみたらし派だ」
「そ、そう。カガリちゃんと気が合いそうね」
そんなことを聞きたかったわけではないので思わず顔がひきつるがすぐに切り替えてジークと向き合う。
「貴方の目的は、何?そして、貴方は人間なの?」
これを聞くのは勇気が必要だった。私が最初にジークに褒められた時、あの時既にジークは私が気づいたことに気づいたはず。
「そこまで気づけたのは手放しで称賛するよ。
あと質問については………少々複雑でな。人間をベースに色々混ざったやつだと思ってくれればいい」
否定しない。誤魔化す気もない。そして隠す気もない。………ある程度力量がないと気づけないとはなんとも大胆な人。
「本当に、見たまんまね」
「それしか言いようがないからね。後はまぁ………人間が魔王へ堕ちたって認識なら現状はおおよそ理解できるだろう」
「堕ちた………?」
人間がベース、というのだから改造されたとか色々考えていたのに元が人間であると言われるとそういうケースはあり得るのだろうと妙に納得してしまう。
「貴方は魔王になりなさい。………そう言われてな。
勇者になれとか英雄になれとか言われるかと思いきや魔王になれと言われたんだ。―――本当に、しょうがないやつだよな」
複雑そうな表情だった。相手は恐らく女性で、きっと………誰よりもジークを理解していたのだろう。そしてジークも愛していた。だからこそ彼は魔王と名乗り続ける。これからも、きっと。
「あぁ、俺の目的についても回答してなかったな。………とはいえそんな小難しいことは考えてない。
俺はセラフィとカガリを見守って、あとはしたいようにするだけだ。二人の願いを叶える手伝いをして、その結果をどう捉えるか見届けて、満足したならそれでいい。新しい目標が見つかったらまた手伝ってやるさ」
「随分目をかけてくれるのね」
「アイツらは大きな目標を諦めるでもなく、ただがむしゃらに欲するでもなく、自分で掴む為に努力してきた。………なんかな、応援したくなるんだよ。あぁいうのは」
少し、ほんの少しだけ羨ましいと思った。ジークは二人のことを考えて、理解して、優しく見守っている。顔を見れば分かる。………なるほど、これで私も心置きなく彼を信頼できる。
「ねぇ、ジーク―――」
決心した私は、ジークに私の胸の内にあるものを話した。
彼はそれを黙って聞いてくれた。頷いてくれた。そして、理解してくれた。
―――あぁ、本当に………二人が羨ましいと、思ってしまった。




