2-17
※ミラベル視点
「お、帰ってきたか。最終調整だけの状態にしてあるからそんなに時間はかからないぞ」
戻ってきた私達に彼は笑顔を向けるジーク。その手には杖が二つ。本当に私の分も用意してくれているらしい。
「二人とも一気にやるからほら、こっちおいで」
座ったままこちらに手を差し出される。先ほどのカガリちゃんとのやりとりから何をするかは理解しているので歩み寄ってその手に触れる。
ジークは目を瞑り、私達の魔力の流れを読み取っている最中。………やることもないのでジークの横顔をじっと見つめる。整った顔立ち、赤い髪、階級の高い貴族でもなかなか見ないほどその容姿も、手入れも行き届いている。
………そういえば、先ほどの剣をみたけど恐らく大金を生み出せるほどの非常に高レベルなものだった。私の知る限りあれに匹敵しうるのはクリスの聖剣くらいだろうか。
「よし、オッケー。二人とも、触ってみてくれ」
急に声をかけられハッとする。随分考え込んでいたようだ。
私は差し出された杖を握り、魔力を流す。すると砂に水が染み込むようにスッと魔力が杖に流れ込み、イメージした魔法はすぐにでも形にできるだろう。
「これ………凄い………」
隣のセラも思わずため息を漏らすほど良くできている。元々杖は魔力の増幅や詠唱の簡略化などの役割を持つがこれは後者に特化しているといえる。
「それには隠しギミックもあるが………まぁそれは明日だな。とりあえずこれで今日は終わりだ。明日に備えて早めに寝ろよ」
「ジークは?そういえば寝てるとこ見たことないけど」
「そもそも俺は睡眠はそんなに必要ない。ついでだから玩具でも作ろうかなとか、後は色々な」
セラが無言の問いかけのようにじーっと、トゲのある視線を送っている。ジークはえぇ、なんだよと顔をしかめながらも、ちゃんと相手をしている。
………セラのあんなに気安い態度は久しぶりにみる。あんなことがあってからずっと何か憑かれるような必死な顔をしていた彼女が、カガリちゃんという友に、そしてジークという魔王と出会いこうして笑顔を見せている。
クリスを殴るだけだったのも、クリスに加勢したダヤンとレニーを………やり方はあれだけど、すぐに戦闘不能にしたのも恐らくセラのため。彼女の意思を尊重しつつ、その上で悲しまぬように気を使ってくれている。
そんなジークにセラは心を開き、自覚しているかは別として惹かれているだろう。
………セラには悪いけど、今夜は少し彼を借りよう。色々と気になるから―――




