2-16
※カガリ視点
可愛い。
―――凄い。本当に凄い。
私の剣、黒影のグリップを握った瞬間に理解できた。
―――この武器は私だ。私のことをよく理解していて、私の手足のように無理なく振ることができる。
こんな剣を私は見たことがない。
「違和感はあるか?」
「ない!何一つない!むしろそれが違和感なくらい!」
「そうか。それは良かった」
違和感など覚えるほうが難しいくらいの出来映えに強く返事をするとジークは嬉しそうに微笑む。
それから数回振ってみたが問題はなく、試し切りにと投げられた石を斬ると断面はまるで鏡のように綺麗だった。
「その武器には魔力を流せる機構がある。これまでは武器に魔力塗るようなイメージだったろうが、今後はスポンジに水を染み込ませるイメージになる」
「スポンジ………?」
魔力を通せばその表現がどれ程適当なものかすぐに理解できた。本当に流した分だけ刀身は輝き、その切れ味を増している。
この状態でジークに向かって振るよう指示され、その通りにすると三日月のような光が刀身からジークに向かって放たれたが、それをジークは作り出した剣で粉砕する。
「よし、上々だな。
さ、武器も出来たことだしキリもいい。次の準備もあるし、その間に3人で風呂行ってこい」
未だ興奮が冷めぬ中でそう言われても、まだ試し切りもしたいし使い方をしっかり覚えたい。先ほどの攻撃も汎用性がありそうだし色々やりたいが―――
「明日から本格的な訓練を始めるから、今日は休んどけ」
「それもそうね。お言葉に甘えるわ」
私達のやりとりをジーッと見つめるセラフィの視線。振り向くと口を開き―――
「随分素直に言うこと聞くわね」
なんてことをいう。ジークの話は合理的なのだから拒否する理由もないのだけど。
「明日から鍛えてもらえるのだから、今から無理する必要はないわ。さ、早く行きましょ?」
変わらずジト目のセラフィとクスクスと笑っているミラさんを連れて私達はお風呂に向かった―――
―――――――――――――――
―――湯船に浸かると身体の疲れが抜けていく。身体に付いていた細かい古傷もいつの間にか治っているほどの治癒効果があり、ここに一時間浸かれば全回復するのではないかというほど。
ミラさんも湯船に浸かるとあっという間にその虜になっている。
「本当にジークの工房は凄いのね。もうここに住みたいくらい」
「気持ちは分かるけど、クリスが怒り狂うわよ?」
「知らないわ。子供のお守りは疲れるもの」
今はあんなやつのこと考えたくなーい、と言って肩まで浸かるとセラフィは気持ちは分からなくもないと苦笑い。
確かに見ていてあまりいい印象はない。まるで世界は自分が中心であるかのような傲慢さが垣間見える。
「昔はクリスにゾッコンだったのにね」
「今思えばどうかしてたわ。早めに気づけて良かった」
今明かされる衝撃の真実。ミラさんは昔あの勇者に惚れていた。
「そんなクリスは貴女にゾッコンだったけどね?今も昔も。婚約してから随分舞い上がってたのは今でも覚えてるわ」
更にはあの勇者とセラフィが婚約者だったとは………!思えばセラフィのことをほとんど知らないけど、こうしてミラさんが居てくれたお陰で知ることができた。
「あれはどのみち破談にする予定だったから良いのよ。それより、ミラはジークとの距離近くない?あんなのがいいの?」
「え?彼は素敵な男性だと思うわ。もっと彼のこと知りたくなっちゃってここに来たんだもの」
「………それをクリスが聞いたら卒倒しそうね」
あの勇者の身から出た錆なのかもしれないが、この話は是非とも私の胸のうちに留めておこう。
―――それよりジークに興味あるって、ホントに?




