2-15
※ミラベル視点
―――私はあれから宣言通りジークについて工房で泊まることにした。
クリスは当然、セラもミラも、こんな男に付いていったらダメだとか色々言っていたけど最後は折れた。というか、私とセラで説き伏せた。そんなことはないだろうけど、一応ジークがセラ達に変なことをしないように見張るといったら渋々だが了承してくれた。
クリスを工房に連れていけばもう少しマシだったろうけどそれはジークによって拒否された。まぁ当然といえば当然なのでクリスを含め反論はない。
で、王国の外壁付近の人があまりいないところまで歩き、魔法陣を展開したのでそれに乗ってジークの工房まで転移した。
その先にあるのは驚きの連続で、そして美味しい料理と与えられたベッド。飛び込むとそのまま人をダメにするような魔力に抗うのは一苦労だった。
で、現在はジークの作業部屋に集まりジークの作業を見学している。
「まずはカガリからだな。ほら、こっちこい」
既に剣の刀身部分は出来上がっており、その鉛色の刃は一つの芸術のようだ。私のスキル、魔力干渉を発動してみるとその刃は魔力が循環しており魔力を通せばより強い力を発揮するだろう。余談だがジークの潜在魔力などに気づけたのも魔力感応によるもの。見ることもそうだがその名の通り干渉することもできて結構便利である。
「え、と?」
こいと言われて来たカガリちゃんだけど、とりあえず何をすればいいか分からずジークの隣に座る。するとジークはカガリちゃんの手を取りジーっと見つめる。
「えっ、ちょっと待って。その女の子らしい可愛い手じゃないしそんなに見られると………」
恥ずかしがっている姿がなんとも可愛らしい。ピュアだ。乙女力は非常に高い。
「うん、やっぱりカガリはいい身体してるな」
「「「!?!?!?」」」
いきなりのセクハラ発言にカガリちゃんは顔を真っ赤にする。確かにいい身体つきだけど、胸も大きいしあんなりケーキ食べたのにお腹は引き締まってるし、うらやましくなってくるけど!
「あ、ごめん。言葉足らずだった。魔力の経路とか魔力炉心とか色々見ててな」
「び………びっくりしたぁ」
素直に頭を下げる姿をみる限り、本当にそれだけだったのだろう。カガリちゃんも驚きはしたもののこれ以上の言及はない。
それからジークは無言で刀身に触れ、調整をしている。その作業を見ていて思うのは………見事だということ。彼は私と似たような能力を持つのか、刀身に流れる魔力に触れてその流れをカガリちゃんのものに寄せている。
………普通は無理だ。どれ程の集中力と、記憶力と、精密な魔力操作があっても困難な技。人が武器に馴染むのではなく武器を人に馴染ませる。こんな発想があったとは。
「よし、こんなもんかな。あとは柄や鞘とかだが………どんな剣をご所望かな?」
それからカガリちゃんの要望を聞きつつ30分ほどで剣を完成させた。グリップ(剣を握るところ)には黒影という名が刻まれた、カガリちゃん専用の武器。
受け取ったカガリちゃんはギューッと、まるで幼い女の子が欲しかったぬいぐるみを貰った時の嬉しさを表現するように強く抱きしめていた。




