2-13
※ミラベル視点
誰かが忘れられている気がするけど、多少はね?
「美味」
ケーキをホールで5つ平らげたカガリさんが満足そうに頷く。………凄いわね、ホントに。
「そういえばカガリさんとジーク、ガーベラさんはセラとどういった関係なの?」
一人を除き落ち着いたところで関係性について問いかける。セラの様子をみる限り心を開いているのは分かる。ただ、パーティーを組んでいるにしてはパワーバランスが可笑しいのだ。
「カガリは私の友人。ジークは………一応私とカガリで召喚した異世界の魔王。ガーベラさんはジークのメイドってところかしら」
さらっと凄いこと言ってるけど先ほどの戦いぶりと………内包する魔力の片鱗だけでも異次元の強さであることは理解しているので事実だろう。
魔王であるというのにこうも友好的なのは不思議なところである。
「ならカガリちゃんは私の友達ね。仲良くしましょ?」
「え、あ、よろしく、ミラベルさん」
「ミラでいいわ。カガリちゃん」
セラの友達は私の友達理論によりカガリちゃんを友達にする。少し照れ臭そうに握手を交わしたので友達決定。
「………魔王なのに何故誰も殺さない?君の目的はなんだ?」
ここで黙っていたクリスが口を開く。流石にこの状況ではご都合主義も発揮できず、口調も何処か弱々しい。
「今んとこの目的はセラフィ達を鍛えることかな。大迷宮に挑むには不安過ぎる」
「そんな………危険じゃないか!?」
「だから鍛えるんだよ。明日から鍛えて最低限の実力まで伸ばす。終わったら付き添って大迷宮攻略だ。セラフィとカガリの望みだ。口を挟んでも無駄だぞ」
それ以上は言わせないと、鋭い視線がクリスを貫く。納得していなくともこれ以上の発言は怒りを買う可能性が高い。敵意のない相手を刺激するのは愚かだ。
「ジークが二人を鍛えるの?」
これだけの実力者の指導があれば上達はするだろうが………やはりセラを止めるつもりはないということか。不安はある。あるけど、同時に彼ならきっとセラの心まで救えるのではないかと期待してしまう。なんと都合のよいことか。
「メニューは考えてるし装備も整えてやる。あぁ、せっかくならミラベルの分も作ってやろうか?」
「いいの!?」
驚きと興奮から、つい身を乗り出してしまう。すぐ我に返って座り直すが恥ずかしさが湧き上がってくるがジークはそれを見て楽しそうに笑う。
「安心しろ、そんな凄いものは作るつもりはない。実力を錯覚してもらっては困るからな。
じゃあ後で工房に案内する。ガーベラ、アスターに連絡しといてくれ」
「承知いたしました」
よく考えている………というよりこれはもっと純粋な、優しさ。高性能な装備は使用者をより強く、または潜在能力を高めてくれるがそれはあくまでも装備に依存した強さであり、それは何れは足元を掬う。
………そういった意味ではクリスがいい例ともいえる。彼は実力もあるが勇者となったのは聖剣に認められ、国宝級の装備を与えられたからだ。―――本人は気づいていないだろうけど。
「というわけで早速行くか。まずは―――」
「どこにいくのですか?」
不意に現れた女性がジークの肩を掴む。笑顔ではあるが鬼気迫るものがあり、非常にご立腹であることはすぐ分かる。
「………あ、何か忘れてるなーと思ってたらミレイナか。ガーベラは覚えてたか?」
「はい。しかし、優先順位をつけたところ黙っていても問題ないと判断しました」
「ひ、酷い………」
とりあえずミレイナさんを宥めるところからスタートするのであった。




