2-12
※セラフィ視点
一目で苦労人と見抜いたよ。
モブ2人はジークの用意したコートを羽織り、ミラの指示でこの場を去っていった。流石にあのまま連れ歩くのは何かのプレイでしかないので妥当な判断である。
クリスはミラに魔法で癒してもらい、ある程度動けるようになった。
因みに途中から女冒険者達が居なくなっていたのも騒ぎにならなかったのもガーベラさんが魔法で結界を貼り認識阻害も行っていたためらしい。底が見えないほど有能なメイドである。
「えーっと、ジークさん、でしたよね?」
ミラが遠慮がちにジークへ話かけている。身内のしたことの後始末に追われるミラは本当に苦労人だ。
「あぁ、ジークだ。さん付けは要らないよ」
「ではジークと呼びますね。
………この度は私のパーティーが失礼なことをしました。ごめんな―――」
頭を下げようとして、ジークがそれを止める。驚いて顔をあげると頭を撫でて優しく微笑んでいる。
「君は悪くない。あれが最良だった。だからごめんなさいじゃなくて、よろしくって言って欲しいな」
ジークは手を離すとミラは顔を綻ばせる。そして手を差し出し、ジークの手を握る。タラシである。
「私はミラベル。よろしく、優しい魔王様」
その笑顔は、私の記憶の何処を探しても見つからないほどキラキラしていた。優しい魔王………不思議な称号だ。
「優しくはないけどな?
さて、お友達と再開できたわけだしお茶でもするか」
「なら美味しいケーキのある喫茶店知ってるから、案内するわ。せめてそれくらいさせて?」
お詫びの代わりに歓迎しようというミラ。ジークも当然、快諾。美味しいケーキと聞いてカガリが目を光らせる。とても可愛い。
「じゃあお願いしよう。………なんか忘れてる気がするけどいっか!」
ジークがそんなことを言うが誰も反応しない。大丈夫だろう。………何か忘れてる気がするけど大丈夫。
………因みにクリスも付いてくるが、私とミラもいるし大丈夫だろう。
―――――――――――――――
―――それから全員で移動してミラの行きつけの喫茶店に入る。内装含め、一見すると何処にでもある普通の喫茶店だが紅茶とケーキを口にすれば評価は一転。甘くて美味しい。ふわふわしている。これでお手頃価格というのだから素晴らしい。
「美味しい………凄い………甘い………」
山奥での暮らしも長かった為、甘いものはそこまで口にできる環境でなかったらしいカガリはもうこれでもかというくらいケーキを食べている。
現在はホールで4皿目に突入。何処に入るの、それ。
「………」
「あの、ガーベラさん?食べてもいいのですよ?」
「いえ、必要ありません」
ガーベラは無表情でジークの隣をキープ。クリスにケーキを差し出されるが拒否し、紅茶のみに口をつけている。
「ねえジーク。ガーベラさんは甘いもの苦手なの?」
「単純に気が乗らないんじゃないか?そもそも食事は最低限しか取らない主義だからな」
ジークのもう片方には何故かミラが陣取る。心なしか距離も近い気がする。クリスの視線はキツいが2人ともどこ吹く風、視界にすら入れない。
「へー。ジークは?」
「俺は好きだよ。特にこのガトーショコラは絶品だ」
「そんなに?一口貰っていい?」
「おう」
ケーキに夢中のカガリ。紅茶を味わいつついつの間にかジークとの距離を詰めるガーベラさん。楽しそうに話すミラとジーク。誰にも相手にされないクリス。うーん、なにこれ。




