2-11
※セラフィ視点
勇者と魔王の戦いは………誰もが想像するようなものではなかった。
「ほいっと」
クリスの渾身の一撃を児戯のようにあっさり避けてそのまま蹴り飛ばす。剣は抜かない。というかこの状況では必要性がないだろう。
「ぐっ………こんなことが!?」
既に何度も蹴り飛ばされており肉体的に限界が近いのだろう。立ち上がるのがやっとのようだ。対するジークは息切れどころかあくびをしている。暇か。
因みにモブ2人については………開幕早々散々な目に遭わされてリタイアした。具体的には目にも止まらぬ速さで服をズタズタにされた挙句際どい水着のようなものに着せ替えられている。生地の少ない海水パンツと紐みたいな水着を着た二人に対してジークがやる気があるならこっちもとことんやってやると悪い顔していったらもう心が折れた。
「どうする?負けを認めるかい?」
ただ、クリスにはそういうことは一切せず殴る蹴るで応戦するのみだった。派手に飛ばされているが立ち上がれる辺り手加減はされているようだ。
「認めるわけないだろう!………先ほどの発言、この力をもつ。まさか本当に魔王か?ならばこちらも本気だ!お前を滅する!」
まるで言い聞かせるようにクリスは叫び、聖剣の力を解放する―――ところでクリスの顔にジークの拳が直撃。聖剣を手放して後ろに倒れた。
「お前………本当に愚かだな。」
倒れたクリスを冷たい瞳が捉える。ゾッとするほどの殺気、見下すように、下らないものだと言わんばかりにクリスを見下ろす。
「愚か………だと!?」
限界だろうになんとか身体を起こしてジークを睨む。ミラも、私も、隣のカガリさえその視線は冷ややかだ。本当に、変わっていない。
「その聖剣とやらどんなもんか知らんが周りに人間がいるのに聖剣ぶっぱなすとかアホだろ。仲間の言うこと聞かないし俺も本気になったら大惨事だぞ。
正直、この場で仕掛けてきた時点でお前は失格だ」
「くっ………好き勝手言うな!魔王を討つことが勇者の使命だ!」
「大義名分の為なら犠牲は已む無しか?論外だよ。そもそもその聖剣の一撃当たるのか?適当に振らせて国民を巻き添えにしたあとで撤退したらどうする?」
クリスは言葉に詰まる。勇者が国民を殺した上に魔王に一切のダメージを与えることが出来ずに逃げられた、なんて事態になれば間違いなく見聞は悪くなる。仕方ないことだと言っても通じるはずもない。
「もういいわ、ジーク。貴方の勝ち。クリスが聖剣の力を使おうとした時点で勝敗は決したわ」
「そんな!?セラ―――」
「貴方はジークに生かされてるのよ?その上、関係ない人々まで巻き込もうとして………これ以上、失望させないで」
一番効くであろう言葉をクリスに送り、止めを刺す。幾ら自分勝手でご都合主義でもここまでの状況になっては認めざるをえない。
―――誰一人死ぬことなく、魔王の勝利で終わった。




