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※セラフィ視点
ずっとセラフィのターン!
「僕が勝ったらセラを、そして彼女達を解放しろ」
「解放しろって随分な物言いだな。ガーベラは俺のものだしセラフィとカガリには必要とされているからこうしている」
おお、火に滝のように油を注ぎよる。寧ろ煽ってるのではないかレベル。クリスも自己中とご都合主義を拗らせてるけどそれにしては煽りまくる。
というかガーベラさんは俺のメイドじゃないの?俺のものなの?ガーベラさん、一瞬ガッツポーズしてた気がするけど?
「そんなはずないだろう!君が怪しげな魔法で彼女達に掛けたに決まっている!」
………最早痛い。クリスには何を言っても通じることはなく、聖剣を構えて一息にジークに迫る。
何故、ミラは何も言わないのだろう。普段のミラならブレーキ役として何かしら発言なりして諌めているのに。
「問答無用かよ」
クリスの動きもジークには大したことないらしく回避するとそのまま蹴りをいれる。クリスは何とか反応できたものの後ろへ大きく後退する。
「そこの………ミラちゃんだっけ?あとモブ2人は参戦しないのかい?」
モブと言われた2人はムッとした表情で武器を構える。しかし、ミラは首を横に振る。
「今のところ口を挟むつもりも手を出すつもりもないです。それに、貴方は嘘をついてないもの」
そういったミラは真剣で、それでいて冷や汗をかいている。ミラは補助魔法に長けているし、潜在的な魔力などを見ることができるスキルを持っている。
―――つまり、ミラには見えているのだろう。ジークの魔力、魔王と名乗る男のそれは決して戯言ではないことを。
「ミラ………君は優しいね。分かった。君は手を出さなくていい。僕達だけで十分だ」
おい勇者、何をさらっとモブ達の参戦を許している。文句の一つも言おうと思ったが隣に来ていたガーベラさんが首を振る。問題ないということだろう。
「良いスキルを持ってるし理解も早い。そして苦労人とみた」
「確かにそうですけど!初対面にそれを言われたのは初めてですよ!」
ミラちゃん………私が居ない間も苦労してたのね。あとでいっぱいお話を聞いてあげないと。
なんて考えてる場合じゃない。クリスは確かに強いがジークと比較したら流石に勝てないかもしれないし、何よりお互いに本気になったら周囲にも被害が及ぶ。どうすれば―――
「安心しろ。お前の悲しむような結果にはさせない。約束だ」
不意に、耳元でそう囁かれる。………ジークなら大丈夫だろう。彼は約束してくれた。なら私は見届けるのみ。何かあれば口を出せばいい。きっと、耳を傾けてくれる。
「くっ………!セラから離れろ!」
しかしその行為がクリスの琴線に触れた。聖剣を構え、再び迫る勇者。
―――勇者と魔王の戦いが始まった。




