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※セラフィ視点
「ちょっ!?待ってくれセラ!話を聞いてくれ!」
回りこまれてしまい逃走失敗。パーティーのメンバーのうち私の知らない二人は困惑した表情でこちらをみているだけ。特に口を挟むことはしないだろう。あとはミラだけど………ミラは大丈夫だろう。となるとこの男だけだが、どうしたものか。
「クリス………私にはやることがあるの。だから―――」
「そんなことする必要ない!君が危険なことをする必要はない!僕が君を守る。絶対に、守って見せる!その為に僕は勇者になったんだ!」
クリスが聖剣を強く握り、前に突きだして真っ直ぐ私を見る。
―――あぁ、やっぱり。クリスは昔からそうだ。彼には私が見えていない。クリスにとって私はただ守られるだけの存在で、か弱い女の子なのだ。私は守られるだけじゃない。
「私にとってはそんなことじゃない………!私にとっては命より大事なことだから!」
心に黒いものが沸き上がる感じがする。そんなことじゃない。私がする必要がある。彼は私の全てを否定する。私の願いを否定する。………私のことを大切に想ってくれているのは分かってる。
でも、私にとってはそれが鬱陶しいだけ。否定させない。絶対に―――
「ほら、しっかりしろ」
―――不意に、熱が私を満たす。
それは魔法のような………手。大きくて、硬くて、それでいて優しい手が私の頭を撫でている。
不思議なことに、それだけで私の中の黒いものがスッと引いていく。心地よさが私を引き戻してくれて―――
「いつまで撫でてるの!」
ペシッとして手を払う。私はもう16で、子供じゃないんだから流石に恥ずかしい。どうやら面白かったらしく楽しそうに笑っている。………毒気を抜かれたなぁ。
「………お前は、何者だ?セラに馴れ馴れしく触れないでくれないか?女性への扱いがなってない」
ムッとしてジークを非難するが私としては否定半分肯定半分。私はお前のものではないし、ジークの私への扱いは女性というより………こう、子供にするものというか。というかこれって不味いんじゃ―――
「俺?俺はジーク。異世界からきた魔王だ」
「………あ」
「………は?」
カガリがあ、やべーって顔。クリス一行は何をいっているのだという顔。ジークはこちらをみてサムズアップ。
よし、完璧だ!といいだけだが確かに完璧だ。火に油を樽で注いだ。これから燃え上がること間違いなし。
「ふさげるな!セラ、君は騙されているんだ。僕がそれを証明してみせる!」
聖剣を構え、ジークへ向ける。対するジークはガーベラさんが用意していた水筒を受け取りそれを呷る。マイペースかよ。もうやだこの魔王。




