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※ジーク視点
呼び出されたのは魔王を名乗るお兄さん。怪しさしかない
―――視界が光で覆われ、それが収束する。
目を開くと草。
草じゃない、草原か。
そして何かの儀式のために造られたと思われる祭壇の上に俺は立っている。
「今です!隷属を!」
少女の声がしたと同時に魔法陣から突如出現した赤い鎖が俺の身体に巻きつく。
軽く振りほどこうとしたが意外と頑丈でしつこい上にピリピリする。なんだこれ。
「フン!」
ムカつくので全身から魔力を放出して砕いてみせた。
「「えっ!?」」
辺りを見渡し、ついでに周囲の魔力を探る。
目の前にいる銀髪の少女と黒髪の少女。状況と魔力の残滓を見るにこの二人が俺を召喚した者というところか。
「隷属が………効かない!?」
「というか人ですよ!?」
「お前達が俺を召喚した上で何か仕掛けようとしたってことか」
パッと見た限り大した魔力も持ってないし、実力もない。
これは完全にイレギュラーってわけか。
「と、とにかく貴女は逃げて!私が時間を稼ぐから!」
黒髪の少女は腰の剣を抜き、構える。
………あぁ、怖いんだろうな。
震えて、怖いのに、それでも引けないから。勝てなくとも立ち向かう。
そんな健気な姿を見せられたら、困るぞ。
「んー、とりあえず事情を聞こうか。名前はなんていうんだい?」
俺は全身に纏わせていた魔力を収め、笑顔を向ける。
「え!?」
「ええ!?」
「俺はジーク。魔王だよ」
「「魔王!?!?」」
これが彼女達との出会い。
多くの物語の、始まりの1ページとなる。