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※セラフィ視点
楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。
あのボックスカーなるものは車という種別らしいが、あれの旅は快適の一言。随所で目を剥くような話もあったけどそれはそれ。仲間がいると旅は楽しくなる。それを知識ではなく体験として、実感できた。
現在はアルフィア王国付近に停車し、全員を降ろしたところで魔法陣が現れ、車が沈んでいく。なお色々なものを収納するスキルは宝物庫と呼んでいるとか。確かに、お宝が沢山眠っているだろう。
「行きもそうでしたが、隠されるのですか?」
マイヤさんが何人はか疑問に思っていたであろうことを尋ねる。出発するときもなるべく人目に付かないところで車を召喚し、更に道中で知ったが車には認識阻害に関する魔法がかけらていて、隠蔽していたらしい。
「あぁ、目立つっていうのもあるが何よりこれはお前らにとってオーバーテクノロジーだからな。無闇に刺激するつもりはないし、気になるっていうなら自分達でたどり着け」
それは一見無関心に見えて異世界人としての、いや、ジークなりの配慮であった。どこまで考えているかは不明だ。でも、この世界の人々に言っているような気がする。何れ到達できるものが、ここにはあるのだと。
あぁ、不思議だ。この考えもジークの本心ではないかもしれない。だというのに、そんな気がして………胸が温かくなる。心なしか心臓の鼓動まで早くなっている気がして、戸惑ってしまう。
「言っとくが売るつもりはない………が、これを見て再現しようというなら好きにしろ。そこまであれこれ言わないからさ」
「………一生豪遊できるようなお金を積まれても?」
「却下だ―――ガーベラ」
突然ガーベラさんの名前を出すと呼ばれた本人は一歩下がる。その眼光は鋭く、何かしようとしたことだけは理解できた。
「あまりしつこいと女でも嫌われるぞ?
あとガーベラも、俺のことを想ってくれるのは嬉しいが短慮はするな」
流石にマイアさんはこれ以上言葉を発することはしなかった。いや、出来なかったが正しい気もする。
それから私達は王国の関所へ着き、ミレイナの顔パスでさっと入国すると二手に分かれ、私達は買い物から始めた。
ミレイナは報告があるとマイアさんを連れて一度魔術師団に戻り、私達は必要なものを購入する。主に食料、魔具、日用品などだ。
「ふーん、こんなもんか」
どうやら目当ての鉱石はなかったらしく、手頃なものを作ることにしたらしい。何を言っているのか。
「ねぇ、あの人達………」
「綺麗な人ねぇ。彼女かしら?」
「従者みたいな雰囲気があるわ!ワンチャンありよ!」
………今まで気がつかなかったが、歩いていると周りがこちらに視線を向けている。ワンチャンあっても困るからできれば観賞だけにしてほしい。
「あのぉ、ちょっといいですかぁ?」
遂に最初の挑戦者が現れた。媚びるような猫なで声で、頬を赤らめた20歳前後と思われる冒険者の女性が3人。対するジークは―――
「何にするか。ストックはあったはずだからそれにするとしてどの程度のスペックに鍛えればいいかな?んー、模擬戦用のメイドは作ってあるがレベルが違うし―――」
考え事をしていてまるで聞いていなかった。マイペースかよ。




