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※カガリ視点
何とも快適な旅。
一切体力を使わず、回復に努められるだけでなく歩くよりも、いや、走るより何倍も早い。
どのような仕組みなのかは分からないけど、とんでもない魔具なのは私でも分かる。
「そういや道中このまんまだし到着するまで質問して―――はい、ミレイナ」
ジークが言い終えるより早くミレイナさんが挙手。色々聞きたいことも貯まっていたのかもしれない。
「まず、貴方の工房にいたメイド達についてから。ガーベラさんは中身があると言ってましたがどのような違いがあるのかしら」
工房にいたメイドはどうも無機質というか無感情な印象だがガーベラさんは普通の女性と変わらない。確かに、気になるところ。
「名前のないメイドはお前達が使役するゴーレムのハイスペック版くらいで考えればいい。
それに対してガーベラは肉体こそ他のメイドと同じように俺が作っているが、中身がある。というか聖霊が宿ってる」
聖霊………聖霊?元素を司る高位の精神体とかそういう存在だった気がする。聖霊には火、水、風、土、光、闇の6つあったはず。………はず。うろ覚えだけど。
………隣でセラフィとミレイナさんが呆気をとられていることからすると凄いのだろう。
「ジーク様によって専用のカスタマイズをされております。他のメイドとは文字通り規格が違います故」
ドヤァという副音声が聞こえる気がする。なんというか、ジークに褒められている時だけ感情が露出している。
「配下にしている聖霊の一部は俺のスキルで作った異空間に住まわせてるからこっちに引っ張られた時にも付いてきた。だから偵察に行ってる間にボディを取り出してそれぞれ憑依させたってわけだ。
量産型は特定の行動パターンと命令を受けるよう事前にプログラムしてあるからガーベラたちに預けてらくらく工房作成キットを使ってあれを作らせた。ね、簡単でしょ」
言ってることは簡単だけどやってることは異次元。うん、もう突っ込まないからね。慣れたほうが気楽だし。
「因みにガーベラは光の聖霊、アスターは闇の聖霊だ」
「「「え!!」」」
前の二人以外が思わず声を上げる。これは、仕方ないと思う。偏見かもしれないけど光の聖霊というにはガーベラさんはクールだし、アスターさんは闇の聖霊というにはよく笑う。逆ならまだ分かったかもしれない。
「聖霊の属性など人間でいうところの肌の色や人種などのようなものです。性格は属性に左右されるようなことはありませんよ」
「そ………それもそうね」
そう言われると納得する。気まずい雰囲気になりそうなところでガーベラさんはお気にせず。と言ってくれたおかげで雰囲気は和らぎ、すかさずジークが次の話題を振ってくれた。
………人生の中でこんなに温かい旅は初めてで、それ故に夢中になっているとすぐ目的地に到着した。




