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※セラフィ視点
―――あの後すぐに解散。夜更かしするなと念を押されたのでこの日は大人しくふかふかのベッドに身を預けた。………朝、起きるのが辛くなるほどに快適であったのは憎らしい。
メイド達が朝食の支度をしてくれて、朝から何とも優雅な一時を皆で過ごす。
簡単なメニューではあったが口に入れると甘い、それでいてすっと喉を通るジュースと、みずみずしい野菜を挟んだサンドイッチは噛むたびにシャキシャキと心地よい音を立てながら特製のマヨネーズと絡み合い、身も心も満たしてくれた。
曰く、この朝食はアスターさんがメニューを選定、指示の元にガーベラさんが調理したらしい。ダンディな執事と美人メイドに死角無しということか。
優雅な朝食のあと、旅支度を整えて居間に集合。魔方陣で街に戻り、そのまま出発することに。
メンバーは私、カガリ、ミレイナ、ジーク、ガーベラさん、マイヤさん(ミレイナの護衛の女性)の6人。
何故ガーベラさんが?しかも昨日のメイド服ではなく私服に着替えている。何事かと思ったが―――
「道中のお世話をさせて頂きます。ジーク様のメイドとして、快適な旅をお約束いたしましょう」
とのこと。表情こそほとんど変わらないものの任せろ!みたいな雰囲気はしっかり出ていた。
街を出て数分。ある程度の距離ができた辺りで立ち止まる。
「さて、ここらでいいだろう」
ジークがそんなことを言いつつ手を挙げると目の前に魔方陣が展開し、そこから四角い黒い箱に車輪のついた乗り物が出現した。
「ワンボックスカーだ。俺が魔改造した逸品で努力の結晶。長距離の移動はこれで決まり!テレビをご覧の皆さんもニッコリだ」
「それは意味分かんないけど………」
カガリがジト目を向けるが………まぁいつものようにさっさと頭を切り替える。ガーベラさんは無表情で拍手をしたあと指を鳴らすとこのワンボックスカーなるものの側面がスライドする。
「運転はガーベラ、助手席は俺。後ろの席はそれぞれセラカガとミレイナとマイア?が座れ」
「「略さない!」」
ケラケラと楽しそうに笑うとさっさと前列左に乗り込み、ほぼ同時にガーベラさんも乗り込む。残りは後にして、私達も乗り込むと自動的にドアが閉まり―――
「出発します」
ガーベラさんがそう発言すると同時に周りの景色を後にする。………凄い。馬車であればガタガタと揺れ、肩凝りもするものだがこのワンボックスカーは一切の振動がない。椅子も柔らかく身体にフィットするのですぐ馴染み、ガーベラさんが再び指を鳴らすと私とカガリの間にある収納スペースのついたテーブルのようなものの一部がスライドし、そこにはそれぞれタグの付いた水筒が用意されている。
「軽食とお飲み物はご用意しております。その他ご要望がございましたらお申し付けくださいませ」
一切振り向かず、それだけ告げて再びワンボックスカーを操作する。か、カッコいい。
「流石ガーベラ。できる女は違うね」
「………勿体ないお言葉にございます」
ジークの賞賛にも無表情………ということはなく、頬を赤らめ口角も若干上がっている。か、可愛い。




