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※カガリ視点
―――爆弾発言と共に転移した先には小さな空間と扉が一つ。ここは洞窟か何処かだろうか。
「皆様、こちらへ」
中身があるタイプことガーベラさんがドアを開くとその先には―――
「「「お帰りなさいませ、ジーク様、お嬢様」」」
何処か寂しげな広間にて、しかし見目麗しいメイドが4人と壮年の執事に出迎えられる。広間にはいくつも扉があり、2階まであるようだ。こんな場所、一日二日でできるようなものではないがどうやったのだろう。
ジークは広間を一瞥した後、壮年の執事に声をかける。
「流石だな、アスター。いい仕事だ。あとは………コイツらをそれぞれの部屋へ案内してくれ」
「もったいないお言葉にございます。
それではお嬢様方のお部屋はこちらのメイドに案内させます」
アスターと呼ばれる執事は慣れた様子でメイド達に指示を与え、その後メイド達にそれぞれの部屋へ案内された。
細かいことは2時間後に、ということで一時解散。部屋は埃一つなく、ベッドはとても柔らかくここで眠ったら起きるのに苦労しそうだと一人ごちていると背後から気配。
「えっと、貴女の名前は?」
メイドだ。ガーベラさんと同じく何処か無機質な感じがするが表情は柔らかい………というかニコニコしている。しかし返答は―――
「申し訳ございません。アタシは量産型の非戦闘用メイドで、名前はありません」
笑顔を崩して少し困ったような顔する。非戦闘用と………りょうさんがた?
「え、ごめんなさい」
「お気になさらず。部屋の外で待機しておりますので御用があればなんなりとお申し付けくださいませ」
「え、あの―――」
そういって再びを笑みを作るとさっさと部屋を出て行ってしまった。
………改めて部屋を見渡す。窓は無く、特に魔導具もないがベッド、椅子、机、収納棚など最低限のものは揃っているしどれも高級感がある。こう、見るからに作りこまれているというか。
そんなことを考えていると部屋の外からドアを叩く音がする。誰かと思いドアを開けるとそこには沈んだ表情のセラフィ。
「ちょっと、いいかな?」
「………うん」
何を話しにきたか、分かるからこそ私は部屋に招き入れる。テーブルを挟んで椅子に座り、向きあう。私から言うべきかと思い、口を開く前にセラフィが口を開いた。
「今のうちに決めておこうと思うの。どっちがジークを連れて行くか」
やはり、そうだった。けれど驚きはない。元々私達が行動を共にする上で作った盟約。
私も、セラフィも、違った目的がありそのためには尋常ならざる力さえ必要だった。だがセラフィだけでは強力な召喚獣を呼び出すには魔力が足りない。私はそもそも魔力人並み以上ではあるが魔法に関する才能はない。だからセラフィの召喚魔法に私の魔力を注ぎ、二人分の魔力を持って強力な召喚獣を呼びだし、その後はどちらが連れて行くか決めることになっている。
ジークという予想外の存在、しかも隷属もできないのでどうするかと思ったが、今しかないだろう。
―――本音でいえば、寂しい。短い間ではあったもののセラフィは芯が強いだけでなく人のことを思いやれる優しい女の子だ。私も一緒にいて楽しかったし、信頼できる友達とさえ思っている。
だけど、私にも目的がある。そのために、立ち止まっているわけにはいかない。でも―――
「適当な理由を作って、私が離れる。だからセラフィ、貴女がジークを連れていって?」
「そっ、そんなあっさりなんて!カガリだってジークが必要でしょう?」
あぁ、本当に、優しい子。同時に胸の内が温かくなる。
「セラフィだって、この先危険な道を行くんでしょう?だったらジークは必要よ。
私は………大丈夫。他のことをしてるから、用が終わったらジークを貸してくれればいいから」
何を成すか聞いてはいない。でも、目的があると語るときのセラフィはどうしようもなく深い憎悪と、絶対に成すのだという覚悟がひしひしと伝わってきた。だからこそ彼女にはジークが必要なのだ。
―――だが、一つだけ私達は忘れていた。
「へぇ、面白そうな話をしているな?」
「「!?!?」」
いつの間にか空いた椅子に座っているジーク。
そう、彼は魔王。私達が呼び出したのは常識外の存在であることを。
「さて、話し合いをしようか」
この世界に―――魔王は降り立っていたのだ。




