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※セラフィ視点
「さて、満足したし本題に入ろうか」
「アイアイサー」
どうやら満足したらしい二人が落ち着いてくれたので漸く………漸く始まる。20分近くやり取りしているのを見せられ何度帰りたい衝動に駆られたことか。
「ジーくんの素性については異世界の魔王ということらしく、三万の軍勢と魔族の幹部………しかも八星魔将の一人を討ち取っている、ね。
にわかに信じがたい内容だけど、ミレイナが嘘つくわけないし何より―――実際に会ってみてわかった。確かに彼の力ならこれくらい出来ても不思議じゃない」
ん?メイリンさんの実際に会ってみて、というのは―――
「アイツは俺の視界に捉えてからずっと魔力や潜在能力をスキルか何かで探ってたんだよ」
私とカガリには聞こえるくらい小さな声で囁かれてビクッと身体が跳ねてしまう。
「ということはあの茶番はわざと………?」
「茶番ってほどでもないけどな。まぁこっちの手の内は晒しておけば理解も早いだろ?」
私達は絶句した。この二人はお互いに意図を理解した上であのようなやり取りをしていたことに気づかなかった。
「本当にジーくんは面白いね。
アタシは彼は信頼できると判断したから、ミレイナの言われた通りギルドカードを発行するよ。書類を用意するね」
暗に信頼に足る人物でなければお断りと言われてゾッとする。本人は特に気にすることなく紅茶を堪能しているが。
メイリンさんが指を鳴らすと入り口から受付嬢が二人入室。書類をジークの前に並べると退出した。………退出するまでジークの顔をチラチラ見ていたところに関しては割愛する。
「ふーん、なるほどね。ここもそういうシステムか」
そういって意味深な笑みを浮かべるジーク。前の世界でも同じようなものがあったとみて良いのだろう。
「ジーくんの世界とあまり差異はなさそうかな?一応聞くけど説明はいる?」
「いや、いい。それよりランクだが、最初かはセラフィ達と同じものにすることはできるか?」
「へ?きみのレベルなら最高ランクのSにしてもまるで問題ないんだけど」
「いやぁ、お守りをするのに不便しなきゃいいからそこまではいらない」
ジークらしい欲のない理由でSランクがバッサリと切り捨てられる。実力差もあることだから仕方ないがお守りというのは釈然としない。これが終わったら抗議しよう。
「あの、ジークさん。1ついいですか?」
「却下」
「まだ何も言ってないのに!?」
魔法一筋、知的美人で有名なミレイナがこのぞんざいな扱いに涙目になっている。何ともレアな光景である。
「面倒事でなければ聞こう。なんだい?」
釘を刺しつつあくまでも笑顔のジーク。ミレイナはこちらを一瞥するとジークに向き直る。
「国に関わることは一切拒否するのは分かりました。その上で聞きます。貴方は―――」
「ミレイナ、焦りすぎ。それ地雷踏むよ?」
先程も少し見せたメイリンさんの鋭い眼差しがミレイナに突き刺さると口を閉ざした。確かに、私の知る普段のミレイナらしくない。砦に関する話のときからそうだが何か、良くないことがあるような気がする。
「ごめんなさい、何でもないです。話を続けてください」
「分かった。このあとのこともあるし残りの手続きは手短にできるか?」
「アイアイサー」
兎耳をぴょこぴょことどうやって動かしてるのか不明な動作をさせながら敬礼。
残りの手続きはサインと相互確認のみですぐに解散となったが―――ミレイナの表情は晴れることはなかった。




