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※ジーク視点
負けた勇者は見ぐるみ剥がされてセーブポイントに放りだされるのさ
―――1時間後
俺は勇者一行を適当にボコって城の外に追い出した。
回復薬は渡したしまぁ家には帰れるだろう。
久しぶりの来客の対応を終え、玉座に戻ると部屋の隅に控えていた白と赤の髪の美女が俺の元へ歩み寄ってきた。
「………ご満足頂けませんでしたか」
「勇者くんの一撃はそこそこだったよ。お陰で魔剣を抜いたし。スミレの判断は良かったよ」
そう、勇者一行がここにたどり着けたのは俺の部下に手出しさせなかったから。
そしてこの美女はこの城の統括をしている俺の右腕、スミレ。
俺が最強の魔王だとすれば彼女は最強の魔女といったところか。
「今後良い挑戦者を輩出させるためにも人類に危機感を与える、という手もありますが如何でしょうか」
それは俺の配下に街や国を襲わせ、魔王を討伐しなくては滅ぼされるという状況を作るということだろう。
「俺、魔王って言っても何もしてないなぁ。でも、スミレの案は却下。そこまでするつもりはない」
そう、何もしていない。何ならたまに近くの街や国にお邪魔してお酒飲んだり買い物してるくらいだ。
元々人類を滅ぼそうとかそういう気もなく悠々自適な暮らし………1000年以上している気がする。流石に苔が生えそう。
「ジーク様は慈悲深い方ですから、人類に情けをかけておられます。本日襲来した勇者も誰一人殺さず回復薬まで与えて―――」
その時、俺の足元に魔法陣が展開された。
「お、これ召喚魔法じゃん」
「なっ!?今すぐ解除を―――」
「いや、いいよ。面白い。ちょっくら行ってくるから留守番頼むよ」
俺を召喚しようなんてヤツは面白い。何よりこの召喚魔法の術式はこの世界のものじゃない。
―――異世界、か。楽しそうだ。