9-16
※ジーク視点
「オルトランド皇国における地位でいえば私がそうだろう。
私はアナスタシア聖騎士団の副団長を努めるリナルドという者だ」
案の定コイツか。向こうも痛みは引いたらしく足取りもはっきりしている。周りの騎士も慎重にこちらの動きを伺いつつ高峰総司の周囲に集まる。万が一の際は盾になるつもりだろうな。
「了解した。ではオルトランド皇国の代表としてお前に聞こう。
今回の目的は魔王である俺の討伐だな?」
「………あぁ、そうだ。あれほどの力を持ち魔王を名乗る男が現れた以上野放しにすることはできない。
そして魔王と手を組むアルフィア王国も同様だ。女神アナスタシアを信奉する国として、そして人類を守る盾として我々は立ち上がらねばならなかった」
苦虫を潰したような表情で返してくる。ここまではまぁ予想通りのお手本のような返しだ。
「しかし今回の件はかなり強引だったな。俺が魔族を二度撃退していることは知らなかったとは言わないだろう」
「それは………否定はしない。できるはずもない。だが、我々はそこまで追い込まれているということは理解して欲しい。
女神アナスタシア様の神託により魔神復活が予言されている。なんとしても、阻止するのだ。その為にできることはなんでもするし危険な存在は排除しなくてはならない」
嘘は言っていない。コイツ自身は人類を守るという信念の元に活動しているのだろう。だがこれで一つ核心に近づいたな。
「だからこそ、君が敵でないのなら―――」
「残念ながら敵だ。俺はオルトランド皇国とは相容れないだろう。
お前らの主に伝えておけ。次、俺達にちょっかいを出したらお前らの国を潰す。容赦なく、皆殺しだ」
「まっ、待ってくれ!」
戻ろうかと後ろを見たところでリナルドおじに止められて振り返る。
あとガーベラ、待て、白夜を抜くんじゃない。ステイステイ。
「君は………何が目的なのだ?魔族と敵対する、魔族と休戦する、我々と敵対する、しかし先ほど現れた魔王から守ってくれた。分からないのだ………」
「俺は俺のやりたいようにするだけだ。
俺のものに手を出すは容赦しないし、そうじゃないならどうでもいい。
それと今回は忠告の為だ。高峰総司………はっきり言って俺が相手するまでもなかったくらいだ。取るに足らないやつを殺すより生かして返して俺の力をしっかり伝えてこい。それだけだ」
今度こそ俺はこの場を後にする。最早コイツらに用はない。あとは―――
「ここから先は人類次第だ」
この世界に俺は異物でしかない。
異物が世界に影響を与えること、それが大きければ大きいほどその世界の人々の人生を大きく狂わせる。それを俺は………知っているのだから。




