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※セラフィ視点
「と、とりあえず話を纏めましょう。
ジークは召喚魔法の失敗で呼び出された異世界人であり、今は我々と行動を共にする意思を持ってくれています」
混乱の中、カガリが収拾してくれる。
私もなんとか落ち着き、それに合わせてミレイナも落ち着きを取り戻して話は再開する。
「ジークさんの要求、意思について再度確認します。
貴方が求めるのは今回の依頼を冒険者として受けた場合に得られる報酬と、ギルドカードの発行。
今後の活動についてはセラフィ達と行動を共にする方針であるということで間違いないですね?」
「うん、それでいいよ。どれくらいで用意できる?」
そういってジークはミレイナに対して鋭い視線を向ける。お互いに探りを入れているような気がする程度しか感じることはできないがジークの発言に対してミレイナが表情を強ばらせているところを見るとその認識で問題ないようだ。
「………このあとすぐに部下を街に派遣し、街に着き次第すぐに手続きができるようにいたしましょう」
「賢明な判断だ。無駄に時間稼ぎをされるのは業腹だからな」
時間稼ぎ、と言われミレイナが図星をつかれたようにハッとするがすぐに戻る。
「ミレイナは素直過ぎるな。もう少し経験値を積むといい。………女としても」
そういってジークは先程とはうって変わって悪戯に成功した子供のように無邪気な笑みを浮かべる。最後の一言だけはボソッと呟いていたがしっかりミレイナの琴線に触れていた。
見た目では年齢があまり変わらないように思える二人だがこうして話している姿をみれば主導権は既にジークが握っている。こうした経験はジークのほうが多いようだが―――
「余計なお世話です!魔法一筋だったのですから経験が無くても仕方ないでしょう!」
しかしミレイナはキレた。
「あ………そういうことね。あー、あれだ。人生長いんだからこれから経験できるさ」
ジークは気まずそうに目をそらすが口元が緩んでいる。コイツ………遊んでやがる。
「いいですね貴方は!さぞ経験豊富なのでしょう!」
「そりゃもう夜も魔王だから」
ポロッと出た爆弾発言に全員が吹き出した。
「よ、よよよ夜の魔王!?」
隣のカガリも顔を真っ赤にして動揺しているところをみると彼女も分かるようだ。そういえば急に暑くきましたね。主に顔が。先程からミレイナの護衛のうち女性の方が頬を赤らめて熱っぽい視線を送ってる気がするが風邪でも引いたのでしょう。
「ストーップ!これ以上は話が終わらないからいい加減にして!はいジーク、要点を簡潔に纏める!」
「顔赤いぞむっつり」
「うっるさい!」
結局夜の魔王だの毎晩5人だのなんだのと話が反れすぎて収拾がつかなくなりその日は解散となった。
何というか、これが一番疲れた気がする。




