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※ミレイナ視点
「………私はジークさんに感謝しています。
セラフィがあんなに楽しそうにしているのは貴方のおかげです。………本当に再会したときは驚いたの。5年前に別れたときのセラフィは………だから、ありがとう。あの子には笑顔が似合うわ」
今でも覚えている。セラフィが全てを失い、絶望した時の顔。国を出て旅をすると決めたときのことも忘れられない。引き留めようとした私とミラベルを彼女は魔法で攻撃してきて………言った。私の邪魔をするな、邪魔をするなら敵だ。全部敵なんだと、憎しみの篭もった瞳を向けてきたこと。だからこそ感謝している。これはジークさんだけではないけれど、彼がいるからこそ彼女は間違わない。踏み外そうとしても必ず引き上げてくれる。
「本当にお姉さんみたいだな、お前は。
何があったかまでは聞かないが、それでもあの執着は尋常じゃない。どうにか尾を引かないようにはしてやりたいがなぁ」
「慎重、なのですね」
「まぁな。何事も慎重に進めるさ。万が一っていうのは怖い。
気をつけていても、だめな時はダメだ。だからこそ高峰総司との戦闘も色々考えているところだ」
高峰総司………彼の名とその力はこの世界では知れ渡っている。邪龍討伐から八星魔将を既に3人討ち取っており向かうところ敵無しといえる実力。絶空と呼ばれる絶対切断、絶対防御を兼ね備えたスキルは打つ手なし。どうしたって勝ち目がない。
「高峰総司のスキルは聞いてる限りはチートの一言。これは恐らくだが女神が関係している」
「女神………女神アナスタシアが召喚した際に付加したと?」
イーリスがそういうとジークさんはうなずく。つまり神の加護を受けた存在であるということで………それなら同じ聖剣を持つ勇者の中でも明らかに違うのも納得できるかもしれない。
「先にお前達に言っておく。俺は女神を敵だという前提の上で行動している。
今回高峰総司と戦うのも女神アナスタシアの動向を探る狙いもあるんだ」
「それは………何を根拠にされていますか?」
流石に魔王だから女神は敵だなんて、そんな理由とは思えない。彼は勇者ですら教導するような人ですし。
「全部は言えない………が、俺が敵だと決めた理由のうちの一つは話そう。先に言っておくと確実にこうだってものはないからそこは注意な。
今回神獣が迷宮目指して侵攻してきた件だが………目的が女神の思惑を阻止するためだった可能性が高い」
「え………」
「俺と戦った神獣は俺と本気でぶつかることを拒否した。隙を与える………そういっていたが、これは第三者に漁夫の利をとられることを恐れたことであり、女神が味方だった場合は出てこない。
その後の動きも高峰総司の派遣が遅いところからも連携は取ってないとわかる。であるなら、迷宮を攻略されること自体に世界のバランスを崩し得る何かがありそれを阻止するためだろう」
ここでイーリスが手を挙げる。
「それが事実であるなら………女神アナスタシアはそんな危険な大迷宮を見逃し続けているということです。
何故女神アナスタシアがそれを残しているのか………大迷宮を攻略することで得られる何かが女神アナスタシアにとって都合がいいから………?」
「そう考えるのが自然だな」
え、ちょっと。とんでもないことが判明したのですけど。
え………世界を守護する女神が………この世界の、敵?




