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※レインディア視点
―――休憩を挟みつつ私達はアルフィア王国を目指しております。オルトランド皇国の勇者が到着する前にこちらが着くとは思いますが、かといって油断もできません。
向こうに異世界の知識と勇者の力を考えればギリギリ間に合うかどうかという可能性だって否定できません。ジーク様が情報収集しているので大丈夫だと思いますが、急いでいる感じをみると猶予がある状態でもなさそうですか。
「そういや聴いていなかったけど、最深部で質問タイムあったようだが5人は何を質問したんだ?」
「あれ、ジーク知らないの?てっきりガーベラさんに聞いてるものだとばかり」
そういえばガーベラさんはジーク様自らお作りになった個体なので視覚聴覚なども共有できると前に聞きましたね。他にも記憶の一部の共有もできると聞きましたが………いいですね、私もしたいです。
「常にしているわけではありません。どうしても必要な状況を除いてしないルールもございます」
「プライバシーは尊重してるしあんまりそういった共有をしすぎると個人の境界が曖昧になるからな。あくまでも必要な時に使える機能として実装しているだけだしちゃんと両方の許可がないと共有不可にしてある。勿論俺であってもガーベラ達の許可がないと共有できないようにしてある」
二人はへ~そうなんだ~という感じで聞いていますが意外でもないのですよね。ジーク様は個々を尊重されております。身内なら尚更混同するようなことは許さないでしょう。お前はお前だ、そこの線引きを曖昧にはさせないって感じで。イケメンですね。
「後々お伝えすることなので代表して私から申し上げますとセラフィ様は指輪を無くした時などについて。カガリ様は迷宮の構成について質問されました」
「ふむ、なるほど」
特に何もコメントはありません。やはりジーク様にとって重要度の高くない内容なのでしょうね。
「アリア様は………質問ではなく要求を。攻略の証の指輪を要求し、受理されております。1チーム一つという決まりはないようで、申し出があれば渡すようです」
そう、アリア様は最後に指輪を要求されました。恐らく攻略したことを示す証拠として手元に残しておきたいと、そういうことでしょうね。彼女は叶えたい願いはありますがその為に迷宮攻略をするようなタイプではなく、自力で叶えようとするタイプです。
「私は紫藤浩太の人物像について………まぁ、分からないとだけ返ってきて終わりました。
最後にレインディア様は………ヴェーダの主については尋ねられました」
「はぁ……?」
予想外の反応。ジーク様はなぜか、何をふざけたことをしているんだといわんばかりの雰囲気で、苛立ちすら感じます。何故でしょうか。これはジーク様にとって有益な情報になるはずなのに。
「無自覚なんだろうが………余計に性質が悪い。失望したよ」
なんで………そんなことを、ジーク様は仰るのでしょうか。私は、私は何を間違ったのでしょう。だって、私は―――
「ちょっとジーク!いきなり何よ!」
「そうです!レインディアさんが可哀想ですよ!」
二人は私を庇ってくれますが、ジーク様は依然として変わらぬ態度。二人に何かをいう素振りも見せません。
「自分の命が軽すぎる。そんなんだから国王やお前の兄にも心配かけるんだ。いい加減気づけよ」
そう言われて胸締め付けられる。
―――気づいている。お父様もお兄様も、私の意見を尊重してくださいますが時折悲しそうな表情をすることを。
でも、その原因が私には分かりません。頑張れば頑張るほどそうです。私は国のため、民のためにこの命を捧げる覚悟ができている。王族としての務めを、私は果たそうとしているだけなのに。
「答えあわせはする。だから………もう少しだけ、本気で考えてみてくれ」
そういったジーク様まで切なそうで、あぁ………私は、どうするのが正解なのでしょうか。
―――結局このあと会話はなく、アルフィア王国に着くまで静かだった。




