1-14
※セラフィ視点
「とりあえず、大体の事情は分かりました。
それで、ジークさんに問います。貴方は今後どうされるおつもりですか?」
ジークが魔方陣を消した瞬間少し残念そうな顔をしたミレイナをみて隣のカガリは苦笑いをしている。私も同じ反応をしているが。
「そう、それなんだけどさ。依頼達成したんだから報酬貰わないと。言質は取ってたし、くれるよね?」
ジーク以外がざわつく。あれほどの力を持つこの男から何を要求されるか、断ったりはぐらかせば何が起こっても可笑しくない。
「勿論、支払います。ジークさんの戦果は非常に大きなものですから」
「じゃあ二つほどお願いしてもいいかな?」
「………できるものであれば」
二人のやり取りを私達は見ているしかない。異世界の魔王、最強の存在が出す二つとは―――
「ギルドカードとお金をくれ」
私達は、いや、ミレイナさえずっこけた。
「え、ええ。構いませんよ。今回の討伐報酬は適正な額をお支払します。それとギルドカードは発行してもらえるよう手配しますが………」
「うん、それでいいよ。………ん?どうした?」
え?なんか不味いこといった?って顔をされても困る。ジークの二つのお願いは当然の権利を行使しただけのものでありわざわざお願いするほどのものでもないのだ。
「それが、二つのお願いですか?」
「そうだけど」
「その………他にはないのですか?」
「ない。お金とそれを稼ぐ手段さえあればいいんだけど、ダメなの?」
本当にそれでいいらしくこちらが困惑していることに困惑している。
「ダメではありませんが………」
「良かった良かった。これでヒモにならずに済む」
今度はジーク以外の全員の頭の上に?が乱立される。何をいっているのだろう。
「異世界だから無一文だし今後この二人に養ってもらうみたいな状況だったし困ってたんだよね。最低限自分の稼ぎで暮らせるようにならなきゃダメだ。
あ、纏まったお金は後日でもいいけど先に少しでも貰え―――」
「くっ………何それ………ヒモって………」
もう限界だった。可笑しくて可笑しくて、もう声を出して笑ってしまった。
あれほどの力を持ちながら、あれほどの戦果をあげた理由がこれだ。最初から私達についていくつもりで、しかし経済面を任せっきりにすることはあってはならないと、そんなことを考えていたのだ。
今まで彼の力しか見てなかった。ジークという男を一切見てなかった気がする。思い返せばどれほど私達を気遣ってくれていたか、心当たりが幾つも出てくる。
ストンと心に落ちるこの感覚。こんな魔王もいるのか、というかそんな魔王って魔王と言えるのかと思うと可笑しくて笑いが込み上げてくる。
「セ、セラちゃんが壊れた!?」
動揺したミレイナが小さい頃の呼び方をしてあたふたしている。
あぁ、ようやく彼と向き会えた。人として最低限の礼儀であるはずのことを、私は取り戻せた。何と業が深いことか。力とはこうまで人を曇らせるのだ。それも、本人ではなく周りを、だ。だからこそ知りたい、ジークという男を。
「オレ変なこといったかなぁ」
―――なお、本人にはまったく自覚がないらしい。




