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※アリア視点
―――あれから順調に進み49階層の階段を降り、50階層を目指す。
お父様から聞いたところによると50階層にある玉座にて攻略を認められ、その証として指輪が手に入るとのこと。40階層の守護者は大きな甲羅を持つ魔物であり硬い守りであったもののなんとか攻略できた。認めたくはないもののセラフィさんの戦術眼は想像以上に優れており弱点を見つけて見事にあの鉄壁を討ち崩した。カガリさん共々本当に欲しい人材ですね。あ、王女はいりません。内側からめちゃくちゃにされます。
「さて、ジーク様から共有頂いた情報によるとここがゴールですが………」
何かに気づいたらしいガーベラさんがふとももに装着しているホルダーから銃を2丁取り出し、構える。
階段を降りた先、目の前には大広間。いつも守護者がでてくるあの、大広間と同じという。これはつまり―――
「どうやら今回はちゃんと最下層のボスが用意されているようですね」
大広間の奥にある扉の前には白い鎧を身についた騎士。手には槍を持ち、甲冑によって顔は隠されている。背丈は成人男性より少し小さいくらいで、女性の可能性もある。身体つきは鎧のせいで分かりませんか。
「ここはどうやらボーナスステージのようなので私が戦います。皆様は端で休んでいてください」
そういい終えると同時に発砲。白と黒の弾丸が飛び、しかし白騎士はそれを手にもつ槍で弾いてみせた。
というかこの状況で端で休めって無理があるでしょう。
「さて、どうみても実力があっていません。私かジーク様宛てということですね?」
つい数秒前まで私の目の前にいたはずのガーベラさんは既に白騎士の背後を取り再び銃撃。相手はそれに一歩遅れて対応しており現状ではガーベラさんの動きに翻弄されている。
『限定解除―――敵を殲滅せよ』
あの白騎士が口にしたのか、抑揚の無い声が響くと白騎士の槍が紅く染まり、鎧に朱が差す。それと同時に動きが格段に早くなり、ガーベラさんの動きについていっている。
「まだ足りませんね」
しかしガーベラさんは更に動きを早め、そして銃撃もその威力が上がる。遂には白騎士の左腕を銃弾が貫いた。
『自己修復………不可能。対象レベル、危険。目標を排除』
白騎士の槍に紅い魔力が集中。これは………強大な魔力。お父様すら凌駕しうる、勇者のような―――
「くだらない。その程度で対抗しようなんて、甘く見すぎなのよ」
ガーベラさんの口調が変わる。雰囲気が変わる。―――瞳が紅く染まり、その手に持つ銃がまるでご馳走を目の前にした凶獣のような唸り声にも似た音をあげている。
『………!?断罪の朱槍、投擲』
白騎士は一瞬動揺するような素振りをみせるも即座に朱槍をガーベラさんに向けて放つ。それに対してガーベラさんは―――
「抵抗は無駄よ。潔く消えなさい!!極点に至る聖邪の魔弾!!!」
白と黒の2丁の銃より放たれたのは白と黒の極大の魔弾。そこにあるのは抗いようのない―――零。触れれば全てを無へと変える、災厄の一撃。対する破壊の朱槍ではあまりにも小さい。矮小な一撃。ともすれば結果は目に見えている。
―――そう。白騎士の投げた朱槍など泡沫のごとく、白と黒の魔弾にて白騎士の存在はかき消されるのみ。




