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※イーリス視点
『グォォォォオオオオオオ!!!!』
「くっ………化け物め!!」
「そのまま抑えて!私がフォローするから!」
ミレイナが前線で指揮を取りつつ黒蝕龍ヘイゼルに攻撃を加えている。リイズ魔法騎士団の中でも精鋭を揃えてきたもののやはり、状況は芳しくない。
予想より悪い結果へ流れている。まさか、まさかとは思いました。確認された特徴から可能性はありました。しかし、まさかここまでとは誰が予想できたでしょうか。拘束しても、攻撃しても、ダメージが通っている感じがしない。
「どうするイーリス!このままだと時間稼ぎにしかならないわよ!!」
「分かっています!ですが、ここで引いたら王国に向かうでしょう。どのみち退路なんてないのよ!」
何故進路が王国なのか。何故このタイミングで現れたのか。一切が不明のこの状況。しかしここで食い止めなければならないことだけは間違いない。
………でも、ジーク様に頼ってばかりはいられません。この世界は、私達の世界です。そしてアルフィア王国は私達の故郷なのです。
覚悟を決めて前に出る。先ほどから観察していて分かってきたこともあります。まずは―――
「不浄をかき消す光をここに!浄化の極光!!」
轟音と共に極大の光が黒蝕龍ヘイゼルの胸部に直撃。今まで他の団員の攻撃ではびくともしなかったが、今回は違った結果に。
『グ………オォォォオオォオオ!!!』
胸部が抉れ、紋様から放たれる光が弱まると黒蝕龍ヘイゼルが態勢を崩した。やはり、そこが弱点のようですね。
「ミレイナ、団員に共有を。胸部が弱点です。光魔法でないと通りは悪いので攻撃するときは光魔法で、そして鱗は炎魔法で攻撃してから氷魔法をぶつけることで脆弱化できます。魔法の使えない騎士は無理をしない程度に気を引き、隙をみつけた者はヒビ割れた鱗を攻撃して剥がしてください」
「分かったわ!」
ミレイナが部隊長を経由して全員に情報を共有している間に私は魔法を放ち、少しでも多くのダメージを与える。
黒蝕龍ヘイゼルもこちらの攻撃が胸部に向いていることに気づき翼や前足でガードするものの数で勝るこちらは他の手段で鱗を徐々に削る。優勢ではあるように見えますが、ここまで大人しいとなると―――
「総員退避!攻撃がきますよ!!」
団員にすぐ下がるように指示。それと同時に黒蝕龍ヘイゼルの全身から黒いオーラが漲り、そして周囲を爆破した。
『キサマ………アタマ、ダナ?』
「なっ!?」
今確かに人の言葉を話した。あの龍はそれほどまでに高い知性を有していた。いや、それよりまずい。私めがけて突進してきています。あれを捌きながら戦うのは無理です。
「魔槍解放。穿て、極点に至る必滅の魔槍!!」
その時、黒い閃光が真後ろから黒蝕龍ヘイゼルに向かって飛んでいき、それを受け止めたが後ろに大きく後退した。
「全力ではないとはいえこれを喰らってこの程度ですか。厄介でございますね」
「あ………貴女は」
「統括機アネモネ。ジーク様の命により助太刀いたします」
強力な前衛。あの黒蝕龍ヘイゼルを押しのけるほどの力をもつ彼女が力を貸してくれるのであれば勝機は十分にあります。
「あと、ジーク様より伝言です。
アネモネを貸してやるんだ………この程度の相手、余裕だよな?
以上です」
全く………相手が相手だというのになんという言い方。呆れますね。
「えぇ、勝ちますとも。リイズ魔法騎士団の団長なのです、伊達ではありませんよ」
この戦い、最早負ける理由はありません。




