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※セラフィ視点
私達は今、砦にある一室にいる。
部屋にいるのは私、カガリ、ミレイナ、ミレイナの護衛2人、そしてジーク。
私の隣にはカガリとジークがソファに順に座り、向かい合うようにミレイナが一人用の椅子に腰掛け護衛は後ろで控えてる。
因みに他の兵士や冒険者には一部を除き休んでもらっている。
あの戦いからまだ一時間程度しか経っていないがジークとの話し合いはすぐにでも必要ということでこうして集まっている。
「先に感謝を。貴方のお陰で死者を出すことなくこの危機を脱することができました」
「どういたしまして。依頼は達成したと言っていいかな?」
控えていた護衛の一人がミレイナ様が頭を下げておられるになんという無礼な!と言いたげな顔をして前に出ようとするがミレイナが視線を向けるとすぐに下がる。
「ええ、十分過ぎるほどの成果です」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
嬉しいと言いつつも表情は少々………いや、かなり悪い笑みを浮かべている。この男は何を考えているのだ。
「そして3人に問います。彼は何者なのか、どうやって出会ったのか。どのような関係なのか」
真剣な表情のミレイナが一度私達3人を流し見た後、ジークと視線を合わせる。これは敵か味方かを問いかけている意味も含まれている。
………よくよく考えてみるとどのような関係かと言われても私達ですら答えにくい。どう答えよいか―――悩んでいたのに【待て】のできない男は笑顔で口を開いた。
「セラフィとカガリに召喚された異世界の魔王、ジークだ。隷属はしてないけど一応この二人が主になるのかな?どう、二人とも」
「「「なっ………!?」」」
「ちょっとぉ!?」
情報過多にミレイナ達が口を開けたまま固まっている。
ダメだ、この男に口を開かせると話が進まない。早くなんとかしないと。
「とりあえずジークは黙ってて!私が話すから!」
「ん?りょーかい」
ジークを抑えつつここをどう乗り切るか思考を巡らせる。正直もう詰んでる気がするけど最小限に抑えないと私自身の目的のためにも良くないのだ。
「術式に問題があったのかは不明ですが、私がカガリに補助してもらう形で召喚魔法行使したところ彼が呼び出されました。呼び出した直後に隷属の鎖を唱えましたが召喚獣では無いためか効力がなく、無効化されてい―――」
「あれは奴隷にするための魔法だろうから問題なく機能してたと―――」
「ちょっと!喋らないで!!」
横から口を挟むジークを止める。
この男に【待て】はできないらしい。胃が痛くなる。
「な、なるほど。疑っているわけではないのですが、異世界の魔王ということですがここを異世界だと断言できる理由、ジークさんが異世界から来たという根拠は何かありますか?」
若干引きぎみのミレイナと目が合わせらない。しょうがないじゃん、ジークなんだもん。
「あります。ジーク、魔方陣を展開してもらえますか?」
「あいよー」
軽いノリで手のひらに魔方陣を展開してもらう。それを見ればジークが異世界から来た存在であり私が異世界人だと認める根拠―――
「この魔方陣の記述………なるほど、そういうことですか」
カガリと護衛の二人は頭に?を乱立させているが魔法に長けている私達には理解ができる。
「記述が違うのよ。私達が魔法を扱う際に発生する魔方陣は何処の国であれ種族であれ関係なく特定の言語のようなもので構成されるのだけど、彼の魔方陣はその何れにも該当しないもの。これならば確かに異世界から来たという根拠になりえるわ」
「恐らく魔法の根源が違う。俺も召喚魔法の魔方陣を見て異世界のものだろうと断じた」
多くの謎は残るものの魔方陣を見てミレイナは目を輝かせている。魔法の研究が大好きな彼女らしい反応だけど、婚期―――
「セラフィ?何か考えてました?」
「ひぃ!何でもないわよ!」
笑顔で圧をかけてくるミレイナの春はまだ遠いと思う。




