7-19
※アリア視点
―――アルフィア王国から来た客人の歓迎会が始まった。
お父様の娘であるこの私、アリア・ゼスト・アズガルムも当然参加しています。
他にはフィンブル騎士団の団長であるヘクター様や宰相のモーレス様、あとはお父様に媚びを売る貴族達。
「これはアリア様。いつ見ても麗しゅうございます」
貴族の一人が私を見るなり一礼してそんなことを口にした。聞き慣れているしなによりその下種な視線が不愉快なので適当に返してその場を去る。
私の目的は一つ。お父様とヘクター様を相手にして圧勝したジーク様にお近づきになること。
お父様から言われているのもあるけどそれ以上に個人的な興味がある。魔族の大軍を二度に渡り単独で撃退しただけでなく八星魔将の一人も討伐。その力は既に世界を変えることができるほどのものであり魔王を自称されているとか。
………だというのにこんなにも平穏なのは何故か。聞くところによるとアルフィア王国には懇意にしている王女がいるそうですが、決して属しているわけでもない。魔族と戦っている以上魔族側についていることもない。そして2人の少女と大迷宮を攻略するのが目的であることも先ほど聞いている。
本当にそれだけが目的とは思えない。では魔王の真の狙いは何か。その心の内を知りたい。
「ねぇ、あの方って………」
「えぇ、ギニアス皇帝とヘクター様を相手にして圧倒したという方ですわよね」
「はぁ………。ため息がでてしまうような素敵な方ですわぁ」
貴族令嬢達が口にしているあの方。そちらへ向かって歩いていると見えてきたのは―――
「ほう、悪くない。いい腕だ」
「だろう?ジーク殿の口にあって良かったぜ」
お父様とお話されているのは赤と黒のメッシュで整った顔立ちの青年。微笑めば貴族令嬢達がうっとりするほど容姿端麗。かくいう私もカッコいいと思っています。しかも強いのですから女として惹かれる要素はこれだけで十分。
しかし私は王女。そんなコロッと落ちるわけにはいかない。
「おぉ、アリアか。ジーク殿、俺の娘のアリアだ。どうだ?美人だろう?」
「もう………お父様ったら。アリア・ゼスト・アズガルムでございます。ジーク様の武勇は耳にしておりますわ」
どうだうちの娘は。まだ処女だぞ?なんてデリカシーの欠片もないお父様のことは置いておいてジーク様に挨拶をすると私に興味を示してくれたらしく笑みを浮かべている。下種な視線は感じない、こう、まっすぐ心の内をみるかのような真摯な眼差しに少し戸惑ってしまう。
「どうも、ジークと名乗っている。いい目をしているね。自分の立場と成すべきことを理解している。
いいね。気にいったよ。なんでも質問してくれ」
「え―――」
しょっぱなから看破されてしまうどころかどんとこいとは、なんということでしょう。お父様は一層楽しそうにされております。おのれ。
「えっと………なんと心の広い方ですわね」
こうして直に話をしていると不思議な心地よさがある。………男なんて誰も同じで、女は容姿と身体にしか興味のないものだとばかり思っていた。
王女である私もそれを磨き、何れはアズガルム帝国のために使う日が来ると理解している。でもそれだけでは足りないと私なりに学び、力をつけてきた。しかしどれだけ努力をしても男の見る目は変わらず辟易していた。
「頑張っている子は応援したくなるタイプなだけさ。ほら、何が聞きたい?」
だというのにこの方は真っ直ぐ私の内を見ている。面白い方ですね。
しかし―――負けませんよ?




