7-12
※レインディア視点
―――楽しい時間はあっという間。気づいた頃にはアズガルム帝国近隣にきていました。
通常は馬車で数日かかる距離なのですけどこのボックスカーという乗り物は半日足らずで到着してしまいました。一家に一台欲しいですがおねだりしたら断れてしまいました。
さて、私達は徒歩に切り替えて門へ向かっております。門の前にはフィンブル騎士団所属の騎士が番兵と話をしているようです。
「行くか」
ジーク様はそれだけ言うと門へ向かって歩きだし、私達もついて行きます。
向こうが私達に気づき驚いたもののすぐに迎えにきてくださいました。団長もいらっしゃるようですね。
「失礼。こんなに早く到着されるとは夢にも思わず出迎えが出来ず申し訳ない。
いや、本当に信じられないな。女性を連れてここまでの距離を1日で渡るのは転移魔法陣でも使わない限り不可能に近いと考えていたもので」
「まぁ馬車じゃそうだろうな。俺の乗り物はハイスペックだからこれくらい朝飯前だ。
それより王城まで案内してくれ。レインディアが使者としてここにいるからそれも踏まえて、な」
私に振られたので軽く会釈をして微笑みますと向こうが目を丸くしていらっしゃいます。ふふ、楽しいですね。
「レインディア・リイズ・アルフィアです。アドルフ・リイズ・アルフィア国王よりギニアス皇帝宛てに書簡をお持ちしておりますわ」
そういって私が王家の紋章入りの封蝋がされている手紙を見せると彼らは話に偽りでないことを理解してくれたようですぐに私達を王城へと案内してくださいました。
―――街中は活気があるものの少し道を反れると貧困層が見え隠れしております。他国についてあれこれいうのは筋違いではありますし、わが国でもないとは言えません。しかし………これがこの国の有り様ということでしょう。
アズガルム帝国の有り方は他国にも伝わっているほど有名であり、力こそが全て。最も力ある者が権力を手に出来る。故に力無き者は朽ちるしかない、と。
「全ての人々救うなんてことは誰にもできない。自分の国でさえ上手く行かないんだから他国までなんてできやしない」
そんなことを考えている私にジーク様が声をかけてくだいました。………でも、ジーク様のお言葉であっても素直に頷くことができなくて―――
「だが………それでも目指していく。完全な結果にならなくても、一人でも多く救うために足掻く。いつだって、そうだったんじゃないか?」
「いえ………しかし現実的ではありません。アルフィア王国の民の貧困層を減らすことさえ、これまでの私にはできませんでした。それに………これから多くの困難が待ち構えておりますわ」
魔族との対立、他国の侵略。国民さえ、満足に守れる保障がありません。分かっていますとも。
「無理だから諦めるのは簡単だ。だがそれに挑めるのがお前だ。でなけりゃ、俺に勝負なんて挑めなかったろう?」
「あ―――」
「人間我が儘なくらいがちょうどいい。俺みたいな臆病者は反面教師にして、お前はお前が満足できる道を進めばいい。後悔は………一生、残るからな」
その言葉には重みがありました。
ジーク様が、俺はそうだったと言いたげで。苦しさも伝わってきました。
そして、ジーク様は私のことを見てくれて、そんな諦めの悪い私が私らしいと言ってくださるのですね。
―――あぁ、なんと幸せなことでしょうか。




