7-11
※セラフィ視点
―――準備が整った私達はその日のうちに車に乗ってアルフィア王国を出発した。
「凄いですわ!馬車が霞んでしまうのですわ!」
助手席の王女はご満悦の様子。国王の許可を得たのでついてきています。
………それでいいのかアルフィア王国。
「ジーク様の発明は本当に画期的ですわね」
「俺の発明じゃないんだよこれ。俺の世界にあったものを自分なりに再現しただけだ。でも、気にいってくれたなら何よりだ」
因みに助手席にいるのがガーベラさんではなくディアなのは本人の強い要望によるもの。ここで素直に譲ってくれるのはひとえに大人の余裕ということだろうか。
「しかしよく許可を出してくれたわね。自分の娘を誘拐しようとした国に行くって言ってるようなものよね。しかも大迷宮にも潜るって言ってるわけだし」
しかし現実は護衛も無し、国王だけでなくアレイスター様から何も言われることはなかった………どころか出発の時にわざわざ時間を割いて見送りにきてくださったほど。
「ジーク様が一緒なら大丈夫と言ってくださいましたわ。それに、外交的にも優位を取れるいい機会ですもの。王女としての役割をしっかり果たしますわ。
あ、ジーク様!これはなんでしょう!押すと窓が開きますわ!」
「そのまんまだ。危ないからその辺のもの触るんじゃないぞ」
王女………とは………。
「でも、非公式での訪問になりますよね?これって外交的にも大丈夫なんですか?」
隣のカガリが不安そうに言う。確かに連絡も無しに、しかもお呼びでないディアがアズガルム帝国に行くというのはイレギュラーな事態というか、場合によっては周辺諸国からも非難されうる。
でも―――
「それについては問題ありませんわ。今回は内密で同盟の申し出という形にします。ジーク様につきましても護衛として雇わせていただきますので。
あ、これも話は通してありますのでご安心を。報酬もお支払いいたしますわ」
そういってディアは手に持っていた鞄から紙を取り出して私達に手渡す。前半は予想通りだけど………私達の知らぬ間に契約が結ばれている。
「因みにジーク様には既にお話を通してありますからこれは合法ですわ。たまたまジーク様がお二人に共有していなかっただけのことです」
「えぇ………」
カガリがドン引きしている。えぇ、私もドン引きしてるわ。アルフィア王国の未来がとても不安なくらいに。
「その辺りはレインディアは上手くやっている。後は向こうがどうでてくるか次第だ」
「国一つ消してしまってはこの世界への影響も大きいですからね」
「それなんだよな。出来れば避けたい」
ジークとガーベラさんの物騒な会話には触れないでおこう。助手席のディアも若干引きつっているけどそれも触れないでおこう。
このあとも他愛ない会話と休憩を挟みつつ、私達はアズガルム帝国へと向かった。




