7-2
※セラフィ視点
年頃の女の子は敏感(意味深)
―――アスターさんに案内されたサロンでお茶と美味しいお菓子を堪能している私とディア。
ジークが先ほどから姿を見せなくて問いかけたものの―――
「ジーク様は少しお休みを取られておりますので少々お待ちくだいませ」
で、アネモネさんの功績を一番に喜びそうなガーベラさんも姿を見せないのでそれも聞いてみると―――
「ガーベラも少し休んでおります」
………それってソウコトなの!?とツッコミたい気持ちをぐっと抑えつつとりあえず待ってみることにした。やはりガーベラさんが奉仕型なのはこう、主人のメイドの、こう、そういう感じのためなのだろうか。イヤラシイ。
「ふむ………。偶然にしては出来すぎているといいますか。これは一度整理したいですね。できればジーク様にもお話を―――」
ディアは大迷宮での出来事を話したところ何か考え事をしておりずっとこの調子。聞いたところによると私達が留守の間ディアを浚うべくアズガルム帝国が刺客を送ってきたらしいが、アネモネさんと協力して撃退したとのこと。そんなことがあったというのになんとも元気そうなのは驚きを隠せないのだけれど。
んー、こうなると暇である―――と考えていた時、サロンの扉が開いた。
「おし、お待たせ。悪いな、出迎えなくて」
いつもと変わらないジークが姿を見せる。後ろにはガーベラさんもいる。………匂いは大丈夫そう。
「なんだセラフィ。警戒してるのか?」
「いえ、別に」
事後かどうか気になってるなんて言えないし。
「今後についての話もあるけどまずは疲れを癒せ。明日詳しいことを話す。………カガリも休めたいしな。
俺はもう大丈夫だからレインディアには軽く話そうか。お前も俺に聞きたいこと、できただろ?」
「その通りでございます。ジーク様はご存知かと思います一件についても報告がありますのでこのあとお時間を頂いても?」
「大丈夫だ。………セラフィ、いいか?」
「うん、大丈夫よ」
止める理由もないので私は頷く。ディアも真剣に大迷宮のことを考えていたし暴走はしない、と思う。何より私がカガリのことが心配で………ジーク達が外出するなりカガリの様子を見に行った。
アスターさんの許可を得て部屋に入ると奥に私達の部屋にも置かれているようなベッドに椅子が4つと円卓が一つ。あとは本棚に本がぎっしりと詰まっている。
ベッドに歩み寄り様子をみるが特にうなされているわけではないようで良く眠っている。
………カガリ。私が一人で旅をしていた時に出会った大切な友人。最初は利害の一致の為だった。
カガリは魔法こそ満足に使えないものの保有する魔力は人並み以上にある。だから私が召喚魔法を使い、カガリの魔力を合わせて強力な召喚獣を手に入れることが目的だった。
本当は、用が済んだら裏切るつもりであった。隷属させれば私の所有物になるので軽く脅すだけのつもりではあったけど、いいとこ取りするつもりだった。それくらい私は自分の目的の為に手段を選らないつもりでいた。それだけが、私の支えであったはずだった。
でも、彼女は純粋に、そして真っ直ぐな正確で………私のことを信じてくれた。そんな彼女を裏切ることができなくて………今思えば、準備にかけた1ヶ月、それがいけなかったかもしれない。
あるとき魔物に襲われた時にカガリが身を挺して庇ってくれたこともあった。理由を聞いたら………大切な友達だものって。本当に、真っ直ぐな子。
私の中にあった黒い感情が消えていって………気づけば本当の友達となっていた。人であることを、捨てずにすんだ。
「………んん、セラフィ?」
考え事をしているとカガリが目を覚ました。眠い目を擦ってこちらを見る。私は思わず駆け寄って抱きしめた。
「ごめんね、セラフィ。心配かけちゃったかな」
「当然よ。………親友、だもの」
「親友?」
「えぇ。ジークが教えてくれたの。何ものにも変えられない、血の繋がりにも負けずとも劣らない最も親しい友のことを親友っていうの」
抱きしめる力が強くなる。ちょっと照れくさいけど、でも、私もカガリにもらった沢山のものを少しでも返したい。そうおもって、伝えてみた。
「ありがと、セラフィ。私達は親友っていうのね。いい言葉………とっても嬉しい」
目的のために手段は選ばない………でも、人間であることを捨てることはしない。例え甘いといわれようとも、私は私らしくあろう。それが、カガリから貰った大切なものだから―――




