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※アネモネ視点
レインディアを守れ。
それがジーク様より賜ったご命令。大迷宮にお供させてもらえないのは仕方ない………ガーベラ様を差し置いてそんなことできるはずもないですが、それでもこのご命令は比較的満足していました。
ジーク様が友人とされた人物の護衛をさせて頂けるのですから、その責任の重さと同時に期待されているということの証明。
失敗はあってはならない。必ず期待に応えて見せる。
「フッ!」
相手は本気になったらしく先ほどまで防戦一方だったというのに今は私に反撃する余裕ができている。油断すれば敗北もあり得る程度には拮抗している状態である。
「お前何モンだ?気配が感じられないんだよ」
あの男の持つスキル、気配探知は人間に限定したスキルであることは確認済み。つまり聖霊である私には通用しないということになるのですが………そんなこと話すメリットはないですね。
「魔王の配下です」
それだけ返して地を蹴り、背後に回って攻撃を繰り出すもののギリギリで察知されて防がれる。反応速度も上がっているらしい。
「ちっ!やりずれぇ!」
「それは何よりです」
光魔法で牽制しつつ攻撃を続行。しかし、これでも致命傷を与えられない。
寧ろ―――
「やっぱこのくらいじゃ無理か。こうなったら出し惜しみはなしだな」
そういうなり全身から魔力が溢れ、両目に蒼い紋様が浮かぶ。これは―――
「そらぁ!」
更に速度が上がり、ついに攻撃がこちらを掠める。最早私と同等以上の力を発揮しているといっていい。
「俺は勇者の血族………先祖返りってやつだ。お前らみてぇな凡人とは次元が違う」
自分の中で危険信号が出る。自身を越える実力を持つ者と命を賭けて戦った経験など皆無。機体を破壊されても死ぬことはないもののジーク様から賜ったこの機体を失い任務失敗というのは………怖い。見放されることはないと分かっていても、怖い。ダメだったかと言われたら自身の存在意義が揺らいでしまいそうで―――それを払拭すべく私は槍を振るう。
「おらぁ!無駄なんだよ!」
「くっ………!!」
こちらの攻撃は既に見切られ、立場は逆転。攻撃を防いだものの大きく吹き飛ばされてしまった。
「ハッ!大口叩いた割りにその程度かよ!」
「まだ………私は―――」
「負けないのですわ!」
………ここにいてはならないはずの人物の声が後ろから聞こえる。振り返ると―――
「私は王女ですので非力ですが、サポートくらいはできますの。有能なところを是非お見せしましょう!」
レインディア様がそこにはいる。自信満々で私の肩に手を乗せて相手を見る。そこには恐怖など微塵も見られない。あるのは―――
「アネモネさん、貴女を信じておりますわ」
信頼。不思議と身体が熱くなる。力が沸いてくる。これは………なんと、心地よいのでしょうか。
「へぇ、ここにいたんだぁ。後でたっぷり相手してやるから大人しくしてな」
下種な視線を向ける男を遮るように立ち上がり、私は槍を構える。
「そんなことには、させませんよ」
まだ私は、戦える。




