6-15
※???視点
―――世界が闇に包まれた頃、俺は動いた。
アルフィア王国の中心部。王城の中にあるモノを手に入れるため、王城に忍び込みとある一室を目指す。
深夜となれば警備兵以外ほぼいない。こうして忍び込むことも俺にとっては造作もないこと。警備兵を一人ずつ仕留めれば楽だが今後のことを考えると最小限にしたい。
衝動を抑えつつも目的の部屋にたどり着き、能力で人間の気配を探る。ターゲットは自室でお休み。他には誰もいないらしい。なんとも気の抜け警備だ。
「結局俺の出番か。ま、役得だからいいけどさ」
フィンブル騎士団の団長であるへクターと事前に取り決めをしていた内容。俺は単独でアルフィア王国へ忍び込み、もし交渉決裂した場合、定時連絡がなかった場合はレインディア王女を誘拐する手はずとなっている。
まぁ、そのレインディア王女は好きにしていいって言われたからこそやる気MAXなわけだ。王族として自分の果たすべき役割を自覚し、常に誇り高く決して媚びることもない高嶺の花のような女。それを手折り堕としていくのは最高の快楽と言える。
だがまずは仕事を完遂させる。俺はドアに手をかけ開き、素早く室内へ―――
「お待ちしておりました」
侵入したはずだった。はずだったというのに。入った先は室内ではあるものの辺りには何もない広い空間。生活痕がないどころかまるでトレーニング場か闘技場のような場所。先ほどまで確認できたはずの気配も消えている。
代わりに確認できるのは目の前にいる眼帯をつけ、真紅の槍を握ったメイド一人だけ。
お待ちしておりました―――つまりはこちらの行動は筒抜けだったわけか?ハッ………ふざけやがって。殺すか?
「では、始めましょうか」
俺は腰の剣を抜き、構える―――刹那、真紅の槍の穂先が目前に迫る。
「くっ!」
剣で軌道を逸らし、そのままメイドに向けて氷魔法を放つが見えない壁のようなものに阻まれ無駄に終わる。メイドは続けざまに槍を繰り出し、俺はそれをひたすら捌く。
「ハッ!やるじゃねぇの!」
「フィンブル騎士団副団長アイザック。この程度では死なない程度には戦えるようですね」
あー………そこまで筒抜けなのな。本当にくそったれだ。ここまでくると内通者がいるんじゃねえか、これ。
「お教えしましょう。アルフィア王国内で貴方が接触・連絡をとった人物全員内通者です。
その手のことに長けた者がおりまして、快く話してくださいましたよ」
流石魔王ってか。拷問官までいたってことは心をへし折られて洗いざらい話してるって前提で考えたほうがいいな。人間の気配を察知できるスキルを所持していることもバレてるからこそ見事に嵌められたってことにもなるし。
「じゃあ………こっちも反撃させてもらおうかぁ!!」
俺は帯刀しているもう一つの剣を抜き、魔力を滾らせる。コイツはかなりできる。それどころかこのまま時間を稼がれて魔王が戻ってきたらマジで積むな。
仕方ない。嬲るには諦めて―――真面目にやる。




