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※セラフィ視点
「とりあえず見てきたことを纏めよう」
砦の客室で休んでいた私達はジークが戻ってくると作戦指令室として確保していた別室に移動し、その報告聞くことにした。
「魔物は大半が操られているやつだね。んでもって指揮しているのは君らでいうところの魔族ってやつかな?それが100人くらいであの軍隊の中で8箇所に分かれているっぽい」
「この短期間でそこまで………」
ミレイナが驚くのも無理はないことだ。ジークがこれを調べて戻ってきたのは出発してから1時間後。偵察して戻ってまでの往複でかかる時間は並みの冒険者なら半日以上かかるしそもそも生きて帰ってこれるかすら怪しい。
「まだ報告は残ってるぞ。
行軍がどうにも遅いのが気になって調べてみたら砦を破壊するためにそれに適した耐久力とパワーのある魔物が確認できた。恐らくはその魔物で砦を破壊して一気に殲滅するつもりだろう。それを守るための防御に特化した魔物もいたし最悪周囲の魔物を盾にするだろうからこれは厄介だ」
戦争において最悪の事態は想定するほどいい。その上で対策を練り最悪の事態を回避すべきだ。しかしこれは―――
「想定していたより………さらに悪いわね」
ミレイナが難しい顔をしている。敵の布陣に死角はなく数で圧倒的に不足している以上これを攻略するのも非常に難しい。
「王国や近隣諸国にも魔物が攻め入っているため援軍は望めない。魔族は数に物を言わせた物力作戦だけど、これは厄介ね」
砦を守る戦力が圧倒的に足りない理由はジークが戻ってくる前に既に確認していたが、本当頭が痛い。そしてそれが分かっていてここにいるミレイナは死を覚悟してここに臨んでいるのでないかと思ってしまって、でも口にできないでいる。
「そういやミレイナって立場的にどんなもん?結構融通利ける?」
今まったく関係ない話に護衛がまだ怒りを見せるがミレイナはそれを視線で抑えつつジークのほうを向く。
「一応私はアルフィア王国ではそれなりの地位にいます。国王の側近である父の娘であり、今は王国の2大兵団のうちの魔術師部隊の副隊長です」
アルフィア王国はこの大陸ではトップクラスと言っていい非常に大きな国であり、王国では最も優秀な騎士と魔術師がそれぞれ黒騎士団、白魔術師団に所属。その名の通り騎士は黒い鎧を身に纏った騎士団であり、白魔術師団は白いローブなどを身に纏った魔術師団。ミレイナはそのうちの魔術師団で副隊長に任命されている凄腕である。
「じゃあ問題なさそうだな。とりあえずミレイナを中心に魔術系に長けたやつと弓兵で砦に張り付く敵を迎撃、カガリ達は乗り込まれた場合の対処でいいだろ。あとは俺がやる」
「後は俺がって―――」
ミレイナがどういうことだと言おうとしたところで遮られる。不敵な笑みを浮かべるジークをみて、何を言いたいか十分すぎるほど伝わってきた。
「俺が殲滅する」
纏う魔力と身体を地に押し付けるような威圧感が物語っている。
―――そう魔王の高ぶりを。




