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※セラフィ視点
―――早朝から出たお陰で日が暮れる前に砦に到着した。
既に戦力のほとんどは砦に到着していたらしく、ミレイナとその護衛で今動かせる戦力は全て集まった。
「ちょっと様子を見てくるけどいい?そんな遅くならずに戻るからさ」
砦に到着するなりその先を指差すジーク。しかしミレイナの背後の護衛はジークを指差して非難するような目を向けた。
「いいわけないだろう!緊急事態で開門することはできないし、打ち合わせも必要なんだぞ!」
「いや、開けなくていいよ。飛び越えるから。方針についても相手の戦力を見てからのほうが良くない?それとも分かってるの?」
さらっととんでもないことを言いつつも後半の言葉には確かな説得力がある。ミレイナに視線を向けると首を横に振っているのでおおよその数しか分かってないということだろう。
「しかし―――」
「では私が許可します。敵のおおよその戦力を確認してきてください。どれくらいで戻りますか?」
「30分………長くても1時間くらいあればここに戻ってこれる。それまでミレイナ達は休憩していてくれ。総大将にはここからが本番だろ?」
色々と………本当に色々と突っ込みどころは多い。でも私達のことを気遣ってくれているのも事実。異世界の魔王を名乗る男にしては気が利きすぎてる。
「じゃ、許可も得たしいってきまーす。あ、戻ったら紅茶とお菓子が欲しいからよろしくね、セラフィ」
何故か指名され、赤黒い稲妻のような魔力を纏ったジークが地面を蹴ると先程の言葉通り、砦を飛び越えて向こうへ姿を消した。
「………なんという魔力」
隣で呟くカガリとミレイナに心の中で同意する。
軽い雰囲気の彼とは対照的な赤黒い魔力と、背筋に寒気が走るような殺気にも似た感覚。先程ジークに突っかかった男はその跳躍力に目がいっているが私達はその魔力が目についた。
………私達が召喚した時にも同じように赤黒い魔力を纏っていたが、今よりもっと濃密で膨大な魔力だった。
そんな彼が戦えばどれ程の破壊力となるか、想像してもこれを越えてくるのではないかとさえ考えてしまう。
しかし、同時にチャンスでもある。もし彼が私に付いてきてくれるならミレイナを説得できるし目的も果たせる可能性がグッと上がる。
その為には彼を振り向かせる必要がある。ということはやはり、こう、あれが必要になるのだろうか。女として、そう、あれとか―――
「セラフィ?」
「ちっ!違うの!そんなつもりはないの!」
「ふーん?」
不意に声をかけられつい言い訳をしてしまう。声をかけてきたのはカガリで、何故かジト目で私を見つめている。
「その………ね?アイツは不思議な男だなーってね?」
「………セラフィのスケベ」
「違う!違うから!私はスケベじゃないから!」
結局カガリの攻撃はジークが戻ってくるまで続いた。
ジーク………彼が現れてまだ1日しか経っていないというのに、これはどうしたものだろうか。そんなことを考えていた。




