0-1
※ジーク視点
全ての始まり
―魔王城最上階―
「我は勇者アズール!今日でお前の蛮行も最後だ!魔王!」
「我らは今こそ貴様を討ち、この世界に安寧を齎す!」
自らを勇者と名乗る男とその仲間達が恐怖を打ち消すように大声で叫ぶ。
面子としては勇者(男)、剣士(男)、狙撃手(女)、魔法使い(男)、回復役(女)の5人。
勇者の手には眩い光を放つ剣………恐らく聖剣だろう。
「おう、かかってこい」
俺の名はジーク。魔王やってます。
時々こうして勇者を名乗る輩の相手をしている。
とりあえず玉座を降りて軽く首や手を回して準備体操。
その間に勇者一行は魔力を練ったりしている。今度は骨があると良いけど。
「喰らえ!ライトニング!」
魔法使いが魔法を唱えると目の前に魔法陣が展開し、轟音と共に稲妻が俺を襲う。
しかし―――
「んー、30点。詠唱が遅い上に魔力を分散させている。相手が格上であると想定される場合は面より点で攻めたほうが良い」
高い魔力耐性を持つ俺にはノーダメージ。この程度の火力なら何もしなくてもダメージは入らないが………今代の勇者一行もあまり強くないらしい。
「ぐ………化け物め!」
「いや、魔王だから」
「行くぞ魔王!我が聖剣の一撃を喰らえ!」
放っておいた勇者が聖剣に力を貯め終えたらしく全身から魔力が溢れている。これから放たれる一撃はとても強力なものだろう。
「やっと準備終わったか。さぁ、採点だ」
異空間に格納していた魔剣を抜き、構える。
勇者の聖剣から放たれる極光、それに対して俺は―――
「砕け、破滅せし深淵の魔剣!」
魔剣を振るうと深淵の闇が放たれ、まるで希望を飲み込むかのように極光をかき消した。
「な………馬鹿な!?」
「ほい、おしまい。じゃあボコるか」
もう見所はない。さっさとお帰りねがおう。