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姫の居場所

 ドミノです。私の読み通り、ハンス邸から姿をくらましていた姫は何食わぬ顔で棄児院にいました。

 ここ棄児院はこの国でおそらく一番潜伏に適した特別な場所。そのことを姫もわかっているのでしょう。

 

「いやー、思ってたより父の衛兵団の動き出しが早くて……」


 棄児院の子供たちにすっかり懐かれている姫がそう言い訳をします。

 ここで言う衛兵団とは街中の道路を封鎖していたあのたくさんの衛兵たちのことを指します。


「まーいいよ姫が無事なら。でもさすがに王様にはこのことは報告させてもらうからね――」


 これでシェニール候夫妻に続き、新しい居候が棄児院に増えることになります。


--



 さて、なにぶん非常事態でしたので、今回は狼煙で迎えを出してもらっての棄児院訪問。

 みんなを喜ばせる手土産など用意していません。

 そして子供たちはいつものように私に歌をねだりますが、披露できる子供向けの歌など用意していません。


 仕方がないので、今回私に「どんたの歌」をプレゼントしました。

 はい、例のジビエラ氏にしかわからなかった暗号唱歌です。

 これは暗号であることを明かさなければただのリズミカルな音真似でしかないのです。


 ですがここで侯爵、この音の並びが私の暗号であることを即座に見抜いてしまいます。

 ――さあ、娯楽に飢えた棄児院住民たちの暗号解析祭りの始まりです。


 【どんたどんたててつてつてべんべん】【どんたたーつたつつたつたへいよー】

 【どんてててててててててべんべんぶいべー】【ちゅぷちゅぷたんどたちたつたどたちゅーじゅー】


 侯爵は役所の解読班と全く同じ書き起こしを皆のために即座に作り上げました。

 この侯爵は暗号唱歌の、重複音に意味を潜ませる私の暗号の解析パターンを知っているのです。

 ですがやはりここでも音の強弱や抑揚は拾ってもらえませんした。私の発音そんなにわかりにくいかなあ……。

 

 --

 

 侯爵を中心とした暗号解読グループに姫も加わって熱い議論が交わされています。

 ですが私は彼らの出す答えに全く期待していません。

 なぜなら、彼らにはキーワードとなる反復音の意味が想像できないだろうから。

 

 【てて】の連続音、テテ王女の部分はさすがに姫か侯爵が拾うとして、問題は他のキーワード。

 元棄児院住人の人名【ドンタ】【ベン】も、ひょっとしたらここの年長者ならギリギリ記憶にあるのかもしれません。

 ですがここでの最難関ワードは街の宿屋の新生児であるタツ君です。

 託児所勤めのジビエラですら苦戦したというものワードに侯爵や姫が到底たどり着けるとは思えないのです――。

 

--

 

 さて、しばらくして彼らなりの解答が出たようなので答え合わせです。

 

 【特定の宿に車両でテテ王女を拾いに行く】、これが私の用意した正解です。

 そしてここのメンバーが導き出した答えは【テテ王女をお迎えしてハンス食堂の新しい鳥料理をご馳走する】。


 ……うーん遠からず近からず。でも、食堂の鶏料理どっからでてきた?


「この3回出てくる【たつた】って、いつもと違う揚げ粉で揚げた鶏料理のことですよね?」


 自信満々な口っぷりでこう答えたのはウパに私は説明を求めました。


「ごめん、私それ知らない」

「姫が小麦粉無駄使いしたから今度行ったときしれっと出てくると思いますよ」


 チキンタツタというそうです。覚えておきます。


「で、今私がドンタとベン。この中で知ってる可能性のあるのウパくらいだと思うんだけど、記憶にある?」

「台所番のいかついドンタならかろうじて……でも私の知ってるあの人はもう台車で遊ぶ歳じゃなかったですよ……」

「……じゃあ物拾いのベンなんて問題外だね……」

「誰だよそれって感じですね……私の物心つく前にいなくなった人としか思えないんですけど……。


 はい、ここ棄児院はお察しの通り割と人の出入りが激しいところなのです。


「ちなみに今の棄児院にもベン君ならいますよ」


 それを受けてひとりの少年が手を上げます。おや、この子は迷子の私を助けた自称森の管理者じゃあないですか。


「今回もドミノさんの出迎えに走ってもらったりしましたから、てっきりみんなドミノさんはこっちのベンのことを言っているものだと……」


--


 ――そして棄児院暗号解読班が解散した後。

 私はシェニール候に肩を叩かれ、よくもまあこんな危うい暗号で何事もなくやってこれましたねと呆れられます。

 そうです、私の暗号は上にジビエラ局長がいなければ成り立たない代物なのです。

 

 しばらくの沈黙の後、私と侯爵はこんなやり取りをしてお互いに苦い表情を浮かべるのでした。

 

「まあ……暗号強度だけは自信ありますから……」

「……ええ、この暗号の評価できるところはそこだけですね……」

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