表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この世界に英雄はいらない  作者: 嘉神かろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/25

第十話 予期せぬ出会い

お久しぶりです(恒例の挨拶)


以前偶にしか更新しない代わりに一話あたりの文字数を増やすという話をしましたが、この話の構成上各まとまりごとに書き上げてから投稿した方が良いと考えた結果、書き上げてから投稿するならキリのいい所で上げた方がよいのでは? という結論に至りました。

というわけで、一話3000字だったり5、6000字だったりになります。

流石にエピローグに当たる部分以外が1000文字しかないのはバランス悪いと思うので前後とくっつけるつもりではありますが。


お知らせはこのくらいにして、

【前回までのお話】↓

 魔族の領域へ偵察に来たスコルは嘗て英雄だった頃の仲間、デミカスの転生した魔族であるアーグに人間を見捨て、今代の魔王に仕えないかと提案を受ける。

 しかしスコルの目的は人間の平和を守る事であり、これを拒否。激闘の末、嘗ての友を自らの手で殺めてしまった。

 彼はその心の傷が癒え切らないまま魔族の領域を囲む死の森を抜け、次に次期英雄が訪れるはずの街を目指す。

木々の隙間から射す光の筋が段々と増えていき、薄暗かった森の見通しも良くなってきた。そろそろ森を抜けられるだろう。

 この時、俺の心は未だ暗雲を背負ったままだった。その事に安心している自分がいたのも確かだが、このままでは何か決定的なミスをしでかしそうで怖かった。


◆◇◆


 ん? あれは街道か。まずは位置確認をしなければならないな。

 幸い人の気配が近づいてくるのを感じる。人数からして乗合馬車か商隊だろうか。馬車を使っているのは間違いない。兎も角彼らに聞けばすぐ分かるだろう。


 そう思って仮面を外し、服装を『冒険者スコル』に変えて少し歩く速度を上げる。

 どうにも覚えのある気配だな……。まあ、問題はないか。


「すみません」


 突然森から出てきて声をかけた俺に、当然馭者(ぎよしや)は警戒の色を見せた。それから少しだけ馬の速度を落とし、見る者が見れば作っていると分かる笑みを顔に張り付ける。

 そんな彼に速足で並んで歩きながら目的だった質問を投げかけた。


「少し森で迷ってしまいまして。ここがどこか教えてもらえませんか?」


 俺が存外に丁寧な言葉遣いをしたからだろう。馭者をしていた壮年の男性は一瞬目を見開いた。

 馬車の速度がまた緩やかになった。普通に歩いていて丁度良いくらいだ。


「ここはアルビアの村とエンゲリエラの街の間だよ。今向かってるのが街の方向だ」

「そうですか、ありがとうございます」


 どうやら丁度良い場所に出たらしい。エンゲリエラの街は次に向かう予定の場所だ。


「どうする? 乗っていくか?」

「いいんですか?」

「ああ。乗合馬車だしな」


 途中からという事で、本来の運賃の半額で乗せてもらえるらしい。断る意味もないので、彼の言葉に甘える事にしよう。


 馬車を止めようとしてくれた馭者に大丈夫だと断って後ろへ回り、幌の隙間から乗り込む。その気になれば馬より早く走れる程度の身体能力はあるのだから、造作もない。

 馬車の中には十人近くが乗っており、定員ぎりぎりの状態だった。俺が乗ると少し窮屈になる為か、二、三人の乗客から嫌な顔を向けられる。


「おや?」


 ……これで暫くはゆっくり休める、そう思っていたんだがな。


「……お久しぶりです。ジークさん。それに、他の皆さんも」


 まさか彼ら、『流星の残光』がいるとは。道理で気配に覚えのある筈だ。まだまだ気が抜けないらしい。

 尤も、その方が今の俺にはありがたいかもしれないが……。


「こんな所で会うとはね。依頼でも受けていたのかい?」

「いえ、旅の途中です。森から出たところに丁度この馬車が来たので」

「なるほどね」


 次代の英雄はそれだけ言うと、体をずらしてスペースを空ける。どうやらそこに座れという事らしい。

 内心では渋々と、表面上は何でもない風を装って揺れる馬車の中を移動し、指定席に腰を下ろす。

 余り彼らと友誼を結びたくないのだが、仕方あるまい。


 道中の二時間は会わない間の事を色々と聞かれた。彼らの話もしてくれたのだが、多くは知っている話だ。

 一番有意義だったのは、パーティ最年少の銀髪の双子の話だろうか。彼ら、レイとルシアは俺と年齢が近いこともあって、距離感が近い。そんな彼らの口から聞かされる武勇伝は、成長は、非常に心地の良いものだった。

 

 あとは斥候役も兼任している双剣使いの女軽戦士、アンネが相変わらず俺を勧誘してきたくらいか。彼女としては専門でない自分が斥候役をする事に危機感を抱いているらしい。

 実際、彼女の斥候としての腕は中の上が精々だ。最高ランクであり、次代の英雄として持て(はや)されるパーティのそれには力不足感が否めない。


 そうこうしている内に馬車は街の前に着き、乗客たちは降ろされる。身分確認のためだった。『流星の残光』ともう少し一緒にいなければならない。


「そういえば、ジークさん達って国の紋章が入った専用の馬車で移動してませんでしたっけ?」


 ふと思い出したので聞いてみた。護衛兼案内役の騎士たちが同行していたはずだが、その姿もない。


「ああ。ここの前の村に入るちょっと前に魔物の襲撃を受けてね、壊されてしまったんだよ。予定も押していたから騎士たちに修理してからこっちまで運んでもらう手筈になっているんだ」


 まあ、あの重たい箱馬車では速度も出ないだろうし、予測できたことだ。そもそもが政治利用なのだからあの馬車を使わせたいのはわかるが。


 そこそこ大きな街で審査待ちの列も短くは無かったのだが、俺たちは五分と経たずに門を(くぐ)れた。門兵の手際が良かった事に加えて、ジークの顔を知っていた者がそのまま素通りさせてくれたのだ。

 時刻はお昼時をいくらか過ぎた頃。

 漸(ようや)く彼らと別れ、ゆっくりと休める。


「さて、僕たちはこのまま領主様の所に行ってくるけど、スコルはどうする?」

「……どうすると言うと?」


 嫌な予感がする。


「実はね、いきなりパーティに入るというのは気が引けるようだから、お試し期間を設けたらどうかって話になってたんだ」


 どうかな、と聞いてくる金髪の優男。思わず吐き出しかけた溜め息を飲み込み、考える。

 断っても良いが、正直彼らを納得させられる理由がない。メリットもデメリットもある提案だが、デメリットの方は彼らに言えるようなものではない。力不足、では納得しないだろう。

 強硬に断って後々に支障が出るのは一番避けたいところだ。

 そうする、しかない、か。はぁ……。


「わかりました。その話、受けさせてもらいます」

「そうか、それは良かった。一応ひと月で考えているんだけど、もう少し長い方がいいかい?」

「いえ、それで大丈夫です」


 もっと短くても良いくらいだ。


「なら、このままついて来て」

「はい」


 ご機嫌な様子で領主の館を目指すジークや彼の仲間たちに見えないよう、こっそりと溜め息を吐く。

 本当に面倒なことになった。

 彼らの今の実力を近くで見られるのは良いが、近づきすぎないようにしたい。



読了感謝です。


今回の分を含めた凡そ14,000文字を週一回程度のペースで更新していきます。

その後は今まで通り息抜きがてら書き進め、一纏まりが書きあがり次第同様に投稿していくことになります。


そういえばいいね機能が付いたらしいですね。

どこに出てるのかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ