扉の先
「ともかく、ナノさんの鍵を使えば普通の鍵なら開けることができるはずです。」
「そんなとんでもない鍵だったのか…どうしてそんなものを僕が持ってたんだ?」
僕には自分の過去についての記憶がない。
でも、物の名前であったり、一般常識については分かる。
だけれど、こんなトンデモ技術が詰まった鍵を僕は知らない。
この鍵を作り出せるような技術を持っているような文明で僕が暮らしていた?
もしそう仮定するならこの鍵について何か知っていてもよさそうなものだ。
誰かが僕のポケットに鍵を入れたというのはどうだろう?それならばまだ納得がいく。
そうなるとその人物はこのトンデモ技術を持っていることになるのだが…。
そんな奴がいるとすればどうして僕のポケットに?
ここで僕に何をさせようとしているのだろう?
「まぁ、便利な鍵が手元にあってよかったじゃないですか。それのおかげでこうして移動できているわけですし。」
「それはそうなんだが…。」
いるともわからない誰かにビビっても仕方がないか…。
気が付いたら誰かの手のひらで踊らされていた…なんてのは勘弁だが今はやれることをやるだけだ。
「先へ進むしかないか。」
「はいっ!レッツゴー‼」
「ゴ~!」
ウィルはこぶしを振り上げ、グリンは翼を広げる。
僕は促されるままにドアノブに手をかけ緑の扉を開いた。
ぎいぃー
「よっと」
僕が扉を開ききる前にグリンが隙間から飛び出していった。
「お、おい!グリンっ!」
「ここすごいよー」
そういったグリンの声は思いのほか遠くから聞こえた。
扉を開けてみると5メートルほど先にその姿はあった。
「なんだ…これは?」
「確かにすごいですねぇ。」
そこにあったの神殿だった。
一目でわかる。見紛う事なき石造りの神殿。
「すっごくひろいね!」
「私たちがいた部屋の倍以上はありますね。」
「おまけに大理石だ。」
部屋を見回すと僕らのいた部屋より倍以上の広さがあることが分かる。
部屋の左右の壁には青と緑の扉、奥の壁の真ん中には窪みがあり、そこには3メートルはあろうかという大きな石像がある。
「今までの部屋が同じ広さだっただけに余計に広く感じますねぇ。」
「そうだな。」
「てんじょうもたかくてたのしぃ~」
グリンは部屋の中を飛び回ってはしゃいでいる。障害物もグリンのいた部屋に比べれば少ないし自由に飛び回れるのだろう。
まずは部屋をゆっくり探索しようと自分たちが入ってきた扉を振り返った時、ある違和感を覚えた。
「なぁ、おかしくないか?」
「何がです?」
「どうしたのぉ?」
二人がこちらをみる。
「この部屋は僕たちが部屋の倍以上の広さがあるのにグリンの隣の部屋…つまり、僕が目覚めた部屋に通じているはずの扉がないんだ。」
二人は僕と同じように壁を見て眉をひそめる。
「ホントですね。」
「ほんとだぁ~。」
そこにあるはずの扉がない。
「本来であればそこには赤い扉があるはずですよね?」
「あぁ、そのはずだ。」
僕は扉があるはずである場所に近づき壁をノックするように叩いて調べる。
コンッ コンッ
このあたりだったよな?
そのまま入ってきた扉まで同じように壁をノックしながら歩いていく…
コンッ コンッ コンッ コンッ
入口までたどり着いて立ち止まる。
どうなっている?
「どうしたの?」
壁に手を当てたまま立ち止まり固まる僕を見て心配そうにグリンが尋ねる。
「……変わらないんだ。」
「…え?」
「変わらないんだよ!音がっ!」
そう、壁を叩く音に変化はなかった。
「どういうことです?」
「ないんだよ………あるはずの壁が。」
あるはずのものがそこには無かったのだ。自分の目覚めた部屋とグリンの部屋を隔てていたはずの壁が。
話のキリがいいところで区切ろうと考えてはいるんですが一話一話の長さが安定しませんね。今後変なところで区切れている箇所があるかもしれませんがどうかご了承ください。




