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審判の箱  作者: 千人
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メッセージ

この部屋を見ると目覚めた時のことを思い出す。

記憶もなくただただ不安だったあの時を。


「僕が目覚めた部屋に似ているな。」

「そうなのか?」

「はい。白い紙が一枚あることと、扉が黒い扉だけということを除けば同じように思えます。」

「結構殺風景なところだったんだな。俺がいたところも窓があるくらいで大して変わらねぇが。」

「何もないからこそ不安に感じたりもしたな。すぐにウィルに会えてよかったよ。」


そう、白い扉の先にはウィルがいて僕を待っていたと言ったんだ。

あの時はポケットの中の白い鍵だけが自分の所有物で唯一の手掛かりだと思っていたが結局その鍵はもともとはウィルのものだった。

ウィルは着々と自分の記憶を取り戻している。

それなのに僕は今だなにも思い出せてはいない。

今は感傷に浸っていても仕方がないか…。

今できることをやらないと前には進めない。

あのウィルに乗り移っていた男は自分のことを知っている。

次に会った時には必ず知っていることを聞き出さなければならない。


「黒い扉も気になるがまずは紙をを調べようか。」

「そうですね。でも一応気を付けてください?緑の扉とはいっても何だかルールがいろいろとずれているようですので。」

「わかった。」


白紙の紙を手に取り裏を見る。

すると紙の裏に書かれていた文字が浮き上がり、声が聞こえてきたっ!



存在することの大切さについてはしっかり考えてくれたかな?

もうそろそろこの旅も終わりだ。

色々大変だったと思うけどこれで兄さんも理解してくれたはずだ。

もうすぐ会えるよ。

またね、兄さん。



紙から浮かび上がった文字は空中に霧散し消えていった。

手にはただの白い紙が残る。


この声は…。

あの男の声だ。

また存在がどうのと言って理解したのかと聞いてくる。

この旅が終わる?どういう意味だ?

ここから出られるとかそういう意味か?それとも…。


「これって…。」

「あの男の声だ。ウィルに乗り移り、僕を兄さんと呼んだあの男だ。」

「訳の分からねぇことを言っていたがもうすぐ会えるって言ってたぞ?」


もうすぐ会える。

これがウィルにまた乗り移るという意味なのか、実際に本体が会いに来るという意味なのかはわからないがいろいろと聞き出さないといけないことが山ほどある。


「この紙だけが置かれたこの部屋…。どう考えてもこの場所について知っているているだけって程度の関係者じゃなさそうだ。」

「そうですね。この部屋を構成するのにも関わっている可能性が出てきました。」

「つまり、そいつに会って何もかも洗いざらい聞き出せば全て万事解決ってことだろ?わかりやすくていいじゃねぇか。」


おとなしく話してくれればそれでいいが、もし荒事になるようなことがあれば、相手を停止させるような奴に勝ち目などない。


「このまま進んでいけばあの男に会えるということでいいのか?」

「その手紙をわざわざここに置いたことからして、おそらくそうでしょうね。」

「進む道はその黒い扉しかねぇしな。このまま進むしかねぇだろ。」

「そうだな。」


黒い扉。

今まで一度も見ていないその色。


「黒か…先にどんなものあるのか…。」


これまでは緑、赤、青、それぞれの色で安全か危険かが判断できたが、これから通る扉は完全に未知のものだ。当然不安になる。


「まぁ、気にしてもしょうがねぇだろ。今までだって色で判断するつっても中に何があるのかなんてわからなかったわけだからな。赤か青を通るつもりで警戒しておけばいい。」

「ですね。私たちが初めて赤と青の扉を通った時と同じですよ。」


確かにそうだ。

結局やることは変わらない。油断しないようにさえすればいい。


「それじゃあ、行こうか。終わりが近いらしいしもうひと踏ん張りだ!」


僕らは黒い扉へ歩を進める。

慣れた動作で鍵穴に白い鍵を挿し込み捻る。

カチャンッ!


ドアをゆっくりと開き部屋の中を覗き込む…。

白い床。白い壁。

隙間から見えたものは今僕らのいる部屋と変わらない白い部屋、ただその大きさは遥かに広いようだ。


「入るがいい。」

「――っ!!」


部屋の中から低く威厳を漂わせるような声で呼びかけられたっ!

一瞬肩がすくんだがウィルとヘルシングにアイコンタクトをして扉を徐々に開けていく…。


「待っていたぞ。審判のときだ。」


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